また、杭打ちした人がデータを改ざんしようとしても、その場に別の人がいれば不正を防げたかもしれません。そのため、この問題をきっかけに、杭打ち時に元請け業者が立会い、支持層に到達したことを現場担当者と一緒に確認することが国土交通省の施工指針として告示されました。
残念ながら、ここで取り上げた設計・施工の問題はあらゆる建物で起こりうるものです。横浜のマンションは手すりのズレという目に見える異常があったため改ざんが発覚しましたが、異常が見られなければ見過ごされていたかもしれません。普通に売られている建物や、普通に人が普通に住んでいる物件の中にも、問題が表面化していないだけの物件があるかもしれないのです。
例に挙げた2つのケースからも分かるとおり、建設・建築の問題には「大きい」という特徴があります。問題となる建物にそれなりの大きさがありますし、建てるためや、建てた後の補償などで動くお金も大金です。造り手が担う責任も、マンションなどの住人に与える影響も大きく、結果として社会に与える影響や話題性も大きくなります。
では、これからマンションなどを買う予定の人が、大きなトラブルに巻き込まれなようにするにはどうすれば良いのでしょうか。
まずは売主(デベロッパー)の規模を見ておきましょう。横浜のマンションの問題では、デベロッパーが建物の建替費用、その間の住民の転居・仮住まい費用、慰謝料を負担することが決まりました。大手でなければこのような対応は難しく、万一の時の補償という点で、売主(デベロッパー)が大きい方が安心感があります。
施工会社についても、基本的には大手の方が技術力が高く、現場工事でも自社の品質管理チェックリストなどを作ってます。つまり、手間、時間、人員、コストをかけて工事しているため、その点でも安心感があるといえるでしょう。
もちろん、大手の物件だから安心とはいえません。あくまでの何か問題が起きてしまった時に必要な補償が受けられる可能性が高いということです。
日々の暮らしやすさや安全性に目を向けることも大切です。例えばマンションの場合、コンクリート壁の厚みが18cm以上あれば隣の部屋の音が聞こえづらくなります。子供の飛び跳ねや、ものを落とした時の音については、LH55以上、LL50以上が理想とされています。細かな知識がなかったとしても、このようなポイントを押さえておけば、騒音トラブルは未然に防げるでしょう。
安全性については、大きな地震が起きた時に玄関が歪み、脱出できなくなるリスクがあります。窓から逃げられない高層の物件を買う場合などは、耐震枠という強度がある枠を使っているかどうかも確認しておきましょう。
また、入居する前には物件の引き渡し前検査というものがあります。壁、床、設備などに不備やキズなどがないか購入者が自分の目でチェックするものです。どの程度細かく見るかは人によりますが、私が知っている中では5時間かけて入念にチェックした人がいました。
そこまで見る必要はないかもしれませんが、重要なのは納得するまで見ること、そして気になる点があれば遠慮なく伝えることです。その時は「小さなこと」と感じたとしても、建物の問題は何かあった時の影響が「大きい」ということを念頭に置いて、満足できる物件を見つけてほしいと思います。
株式会社プラスPM 代表取締役社長 / 一級建築士・認定コンストラクション・マネジャー。
1957年、大阪府生まれ。設計会社、マンション販売会社に勤務後、1986年、28歳で株式会社プラスPMの前身であるプラス建築事務所を創業。1995年、老人ホームのコンサルタント事業を始め2年後の1997年には、現在の礎となるコンストラクション・マネジメント事業を始める。2003年に東京支店を設立し、現在の社名である株式会社プラスPMへと社名変更。2013年、マレーシアの建設事業の支援依頼により、現地法人Plus PM Consultant Sdn.Bhdを設立。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授