もしも建設プロジェクトの担当になったら!! 確認しておきたい「建設のポイント」ビジネスパーソンのための建設と建築(2/2 ページ)

» 2016年12月19日 07時19分 公開
[木村讓二ITmedia]
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担当者に会い、実績にも目を向ける

 建設会社選定の段階では、仮に正式に依頼すると決めた時に、誰が直接の担当者となるか確認し、面談しておくと良いでしょう。提案する人が、必ずしも受注後の担当者になるとは限りません。極端なことをいえば、提案は経験と実績があるベテランが担当し、受注したら新人に担当をバトンタッチすることもあります。依頼後の工程をスムーズにするためにも、担当者の確認・面談は必須といえます。

 また、建設会社の比較では提案内容と見積もりだけではなく、依頼先候補の実績も踏まえましょう。ひとくちに建設工事といっても、工場を造る場合と病院を造る場合とでは求められる専門性が違います。過去にどれだけ経験があるかによって、担当者の知識・スキルも異なりますし、現場で作業する業者(サブコン)の選択肢も変わってきます。

 見積もりについては、材料の単価や数量がわ分かる明細をもらうのがポイントです。例えば床材の一部をタイルから石に変えたいと考えた場合、明細があればコストがどう変わるかあらかじめ把握できます。想定より高くなった場合も、単価が分かっていれば交渉できます。大きな建物になるほど、途中で設計などを変更したり、追加工事が発生する可能性が高くなるものです。その際に明細があれば、仮に材料費の相場が分かっていなくても、費用交渉の経験がなかったとしても、建設会社と対等に近い立場で向き合うことができるのです。

支払い方法と遅延保証を交渉

 建設会社の選定が終わったら、契約書を交わして着工へ進みます。契約で注意したいのは、主にお金の面です。まずは工事代金の支払いについてです。工場や施設など大きな工事の支払いは、着工時、中間、完成時など数回に分けて行うのが一般的です。その際のポイントは、完成した割合以上の金額を払わないことです。

 建設工事では、完成した部分のことを出来形、出来形に応じて建設会社が受け取る代金のことを出来高といいます。発注者側から見ると、出来高以上に払ってしまうことによりキャッシュフローも悪化します。そのため、出来高に対する過払いを避け、少なくとも出来高払い、できれば完成時に払う比率を多くすることが重要です。

 お金に関する2つ目のポイントは、工事が遅延した時の補償です。ここでは、遅延によって発注者が被る損失を反映させることが重要。契約書には、もともと遅延に対するペナルティについて書かれていますが、その金額は低く設定されていることが多く、ゼネコンに有利になっています。例えば工場や賃貸マンションの場合は竣工の遅れが売上に響きます。その分を適正に補償してもらえるように契約内容を交渉しましょう。

 さて、多くの人と大きなお金が動く建設プロジェクトは、経営戦略の一部と位置付けられているケースがほとんどです。担当者のプレッシャーは大きく、建設業者とやりとりした経験が少ない人は特に不安を感じることでしょう。困った時は、ここで紹介したポイントを振り返ってみてください。迷った時は「建てる目的」を思い出してみてください。この2点を押さえておけば、多少の知識・経験不足があったとしても、うまくプロジェクトをハンドリングしていけるはずです。

著者プロフィール:木村讓二

株式会社プラスPM 代表取締役社長 / 一級建築士・認定コンストラクション・マネジャー。

1957年、大阪府生まれ。設計会社、マンション販売会社に勤務後、1986年、28歳で株式会社プラスPMの前身であるプラス建築事務所を創業。1995年、老人ホームのコンサルタント事業を始め2年後の1997年には、現在の礎となるコンストラクション・マネジメント事業を始める。2003年に東京支店を設立し、現在の社名である株式会社プラスPMへと社名変更。2013年、マレーシアの建設事業の支援依頼により、現地法人Plus PM Consultant Sdn.Bhdを設立。


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