ある日突然、自社工場の新設プロジェクトを任されたとしたら、役割を果たしていく自信があるだろうか。
ある日突然、自社工場の新設プロジェクトを任されたとしたら、みなさんは役割を果たしていく自信がありますか?
東京五輪に向けて土地・建物の開発が活性化する中、社屋の増改装、遊休地の活用、社員寮や賃貸物件の建設など、建設・建築と関わる可能性はいろいろあるものです。
今回は「もしも担当者になったら」というテーマで、建設・建築プロジェクトと向き合っていくためのポイントを解説します。
早速ですが、担当者になって最初にすることは何でしょうか。
それは、プロジェクトの内容を明確にすることです。工場などを建てるのであれば「建てる目的」「着工・竣工の時期」「予算」「建物に求める機能」などを明らかにします。
上記4つの中でも特に重要なのが「建てる目的」です。建物はすべて目的を持って建てられます。工場を新設するにしても、生産量を増やすために建てるケースがあれば、製造拠点を移動する足がかりにするケース、遊休地の活用策として建てるケースなどさまざまな目的が考えられます。目的が異なれば、工場に求める仕様や機能も変わります。その点を曖昧にしてプロジェクトをスタートすると、後々設計案が右往左往したり、急な変更・修正によるスケジュール遅延や予算のオーバーするリスクが生じてしまうのです。
また、担当者としては、つい建物の竣工をゴールと捉えてしまいがちですが、事業そのものは竣工してからスタートします。その先何十年という時間の中で、生み出していく機能や効果によってプロジェクトの真価が決まります。その点でも、プロジェクトの目的を把握し、目的を果たせる建物ができるかどうかに重点を置くことが大切なのです。
プロジェクトの内容を把握したら、依頼する業者を選ぶステップに入ります。
パターンとしては、まず設計を設計者、施工をゼネコンに分けて依頼する方法があります。この方法のメリットは、建物を建てる目的や、設計の条件、意図、詳細などを直接設計者に伝えられることです。デザイン性を重視する場合、建物に特殊な機能を持たせたい場合、設計するために高度な専門性が求められる場合などは、この方法が向いているといえます。
ただし、担当者は設計と施工の予算を別にして管理する必要があります。また、設計者の中にはデザイン意識が強く、コスト意識が低い人もいますので、予算管理に注意が必要。工期についても、設計図面が仕上がってからゼネコンに依頼するため、時間がかかる可能性があります。
次に、設計から施工までゼネコンに一括して依頼する方法です。これをデザインビルド方式といいます。この方法のメリットは、窓口が1つになるため、コスト管理しやすく、担当者の手間も少なくなることです。設計者と施工者のやり取りもゼネコンの中で完結するため、短い工期で建物が造れる可能性もあります。
ただし、設計者に依頼する場合と比べると、デザイン力が弱くなる傾向があります。また、設計と施工を並行して進めるため、途中で設計を変更した場合などに追加費用がかかる可能性にも注意が必要です。
どちらの方法が適しているか迷った場合は、3つ目の選択肢としてコンストラクション・マネジメント(CM)を使うこともできます。CMは、発注者(工場建設を依頼する企業など)と設計者・ゼネコンの間に入り、中立的な立場で工事全体をマネジメントする組織のこと。設計者のやり取りでは、設計の条件などを正確に伝え、きちんと図面に反映されているか確認します。ゼネコンとのやり取りでは、見積もりや契約書の確認などをサポートするため、予算オーバーや工期遅延のリスクが対策できます。
また、上場企業の場合はアカウンタビリティがあり、建設会社を選んだ理由を株主に説明する責任があります。CMの活用は、中立的な立場で選んだことを証明し、納得してもらうことにもつながります。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授