生産性向上に向けたデジタルの活用方法視点(2/4 ページ)

» 2017年05月22日 07時22分 公開
[徳本直紀ITmedia]
Roland Berger

 年次有給休暇の取得率も、40代管理職が最も低いのが現状である。そして、そういう仕事に忙殺されている中堅社員の働き方を見て、若手社員が「うちの会社で偉くなっても良いことがない」というネガティブな印象を持つ負のスパイラルに陥っている。

2、デジタルを活用した生産性向上

デジタル化の本質

 すでに多くの文献・レポートでデジタル化のメリットについては述べられているが、生産性向上という観点からデジタル化は3つの利点が考えられる。

 1つ目は、あらゆる事象をデータとしてため込み、より多面的な切り口で分析・定量化するビッグデータの領域である「見える化」。

 2つ目は、それらの分析結果と過去の活動履歴におけるベストプラクティスを結びつけ、最適解を提案するAIの領域である「誘導」。

 そして3つ目は、互いに異なる刺激を持つ者同士をつなげることで新たな価値創出へと導く「つなぐ」である。最近多くの企業で取り入れられているデザインシンキングにおいても、この「つなぐ」ことでのイノベーションを重要視している。

生産性向上の定義

 企業の生産性を抜本的に高めるために、前述のデジタル化のメリットをどのように導入すべきか。やみくもに世の中にある生産性ツールを導入しても、目的を誤ってしまってはただ無駄に投資コストがかさむだけである。まずは、生産性を高めるポイント・生産性が高まっている状態をきちんと定義することから始めたい。

 高い生産性とは、簡潔に言えば「より短い時間/リソース」で「従来より高いアウトプットを生み出す」、というインプットとアウトプットの関係にあるのだが、状態的に図示すると大きく3つのブロックに分かれる(下図B参照)。そして、それぞれのブロックにおいてデジタルの使い方には特徴がある。

(1)適応スピードの改善

 1つ目のブロックは、適応スピードの改善である。これは主に人的リソースの獲得・配置の質を高めることで解決される。自社の人材採用や部署転換、業務割り当てにおいて、「期待していたほど能力がない/発揮しきれていない」、「なかなか業務が定着しない」などと感じた経験は少なからずあるかと思う。それらはすなわち、「業務において求められるスキル要件」と「そのスキルを持つ人材」のミスマッチにある。しかし、そもそもスキル要件が明確でなかったり、人事評価をこういった視点で行っていなかったりという場合も多い。

 こういった状況を打開するための有効なデジタルツールは「見える化」である。例えば、社内において、生産性が高い人や優秀だと思えるデキる人を「見える化」するのである。デキる人は他の人と何が違うのか、なぜデキるのか。そこに焦点を当てて、デキる人の能力・行動・歴史を徹底的にひもといていくのだ。ベンチマークとなる人の活動を捉えながら、業務遂行に必要な能力や、その能力を築き上げるプロセスを「見える化」していく。

 そして、その「見える化」された能力、プロセスに基づき、人材を評価し、教育していくことで業務のミスマッチを防ぎ、適応スピードの向上が図られる。個人の学習履歴をため込み、マップ化することで成長プロセスを「見える化」した学習アプリなどがすでに存在するが、それを企業内に当てはめていくような考え方だ。

Copyright (c) Roland Berger. All rights reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆