しかし、日々忙しいコンサルティングワークに埋没している中ではなかなかそのような時間を取ることは難しい。そのため、(2)のロスの低減における取り組みによって、一部業務の徹底した業務標準化により、刺激と触れ合う時間を生み出そうとしている。こういった業務改革によりリソースを捻出し、刺激と触れ合う時間を業務にはめ込むことが重要である。
STEP4: 恒常的に価値を生み出す組織へと変革する
STEP1〜3の取り組みは、付加価値を高めるには有効である一方、業務に定着しなくては一過性のものとして形骸化する恐れがある。そのため、業務に定着させるための最も有効な手段は、組織から組み換えることである。もちろん、組織を変えることは簡単にはいかない。ハードルだらけである。一方で、日本が諸外国に比べ生産性が低い主たる要因の1つは組織の持ち方にもある。
多くの企業がこれまで、新規事業を行う際に新たに組織を作り、うまくいけばリソースを増やし、主要組織として定着させてきた。決して間違いではないが、その結果、組織の数は増えるものの組織間のコミュニケーションは薄れ、いつの間にかホワイトスペースめがけて複数の部門で同じようなことを検討するようになってしまっている。こういった現象は製品単位・事業単位で組織を持っている企業に多い。
デジタルのメリットを享受するための最大のポイントは“規模”である。全社レベルで標準化できる部分はできるだけ1つにまとめてデジタル化し、価値を恒常的に生み出す組織の軸を定義することが重要となる。
ここまで、業務生産性を高めるためのポイントを述べてきたが、全ての課題を一気に改善していくことは企業内リソースの観点からも難しい。また、企業ごとにビジネスモデルやそれを生み出すバリューチェーンプロセスが違う中では、他社の取り組み成功事例をそのまま移植しても機能しない。
例えば、自社のビジネスモデル・収益構造を振り返った時に、業務のバラつきによるロスが多く、かつ定型業務が多い場合には、徹底的に業務標準化・自動化によりロスの低減を図ることが望ましい。他方、業務のバラつきがあるものの非定型業務が多い場合には標準化は難しい。その場合は従業員の能力を底上げすべく、適応スピードの改善の取り組みに着手した方が良い。
同様に、クリエイティビティが求められる部門においては、業務のバラつきをなくすよりも付加価値を高める取り組みに着手した方が良い。その際に、組織の流動性(組み換えやすさ)も考慮しながら前述の付加価値を高める4つのステップに実践していただきたい(下図D参照)。
日本企業にとって生産性を高める取り組みはもはや必然となっている。デジタル化する社会と向き合い、うまく取り込んでいくためにも、自社にとってどの部分での生産性を高める必要性があるか、そしてどのレベルで高めることが可能かをまずは診断することが先決である。
徳本直紀(Naoki Tokumoto)
ローランド・ベルガー シニア プロジェクトマネージャー
京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、ローランド・ベルガーに参画。製薬、医療機器のヘルスケア領域および、自動車の分野を中心に幅広いクライアントにおいて、全社戦略、マーケティング、デジタル化、オペレーション改革のプロジェクトを多く有する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授