昨今はさまざまな業務生産性に寄与するデジタルツールが展開されているが、自社内での業務整理ができていないままではその効力は最大限に発揮されない。デジタルと上手に向き合うためのポイントとは?
国内労働人口は今後本格的に減少局面を迎えることになり、現状のままでは企業の活動量を維持することも難しくなってくる。加えて、働き方に対する社会の目が厳しくなる中、企業は限られた労働時間で従業員のパフォーマンスを最大化させることが求められてくる。
こういった課題を解決するために、昨今はさまざまな業務生産性に寄与するデジタルツールが展開されているが、自社内での業務整理ができていないままではその効力は最大限に発揮されない。
取り込むべきデジタルのメリットを明確にし、企業側ではそれを受け入れる陣立てを行う必要があり、両者がうまく絡み合って初めてデジタル化の効力は発揮される。そして生産性向上により捻出されたリソース(時間) をより付加価値の高い業務に当てはめていくことで、さらなる高みへの成長を実現することができる。
本稿では、企業としてデジタルと上手に向き合うためのポイントを紹介させていただきたい。
生産性向上の必要性
自部門の働き方を振り返って、『私の部署は生産性が高い』と自信を持って言い切れる方はどれくらいいるだろうか。おそらく一握りしかいないであろう。特に企画部門、いわゆるホワイトカラーの部門においては、ほとんどの方が生産性の低さに頭を悩ましているのが現状である。実際、欧米と比較しても日本の生産性の低さは顕著である(下図A参照)。
日本と同じような産業構造・人口構造を持つといわれるドイツと比べても、生産性向上の取り組みはまだまだ遅れている。短期的には解決が難しいこの問題は、将来的にも現状以上の課題を抱えることになるであろう。
自動車業界を例にとっても、足元の産業発展スピードは、ライフサイクルの短期化、さまざまなサービスの進化と目まぐるしく変化しており、今後は各階層において意思決定スピードの向上・アウトプットの向上が求められる。
一方リソース面では、今後国内人口が本格的な減衰局面を迎える中、15〜64歳の主たる労働人口層は現状対比で2020年には4%、2025年には8%も減少する見通しだ。
また、政府は現在50兆円程度の国内総生産(GDP)を2020年に60兆円まで引き上げることを目標としているが、このような現状ではプラス2〜3兆円程度の上積みしか見込めない。量的なアウトプットの担保ができなくなってきている状況では、抜本的な生産性向上の取り組みが不可欠である。
より苦しくなる中間管理職
コンプライアンスが厳しく追及される現代社会においては、経営者は従業員のワークライフバランスも今まで以上に配慮することが求められている。確かに多くの企業において働く環境は、残業時間を例にとっても、昔と比べて改善傾向にあると言えるが、階層別に見てみると、その多くは20代〜30代の若手社員に偏っている傾向があるのではないか。
会社の屋台骨である40代中間層の働き方を見ると、明らかにしわ寄せが行っているように感じられる。一定のポジションの人材が企業の生産性・品質を担保しなくては、全社レベルで生産性を高めることができないからだ。実際、さまざまな企業の方と話をしていても、管理職の働き方はいまだに楽にはなっていないとの声が圧倒的多数であり、サービス残業も多い。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授