未開拓の豊富な天然資源、若年層が多くを占める6千万人超の人口、中国・インドの中間に位置しASEAN第2の国土を誇る、ミャンマー。急速な民主化を受け世界から熱い視線を集めているが、日本勢にとって「最後のフロンティア」になりうるのか。
未開拓の豊富な天然資源、若年層が多くを占める6千万人超の人口、中国・インドの中間に位置しASEAN第2の国土を誇る、ミャンマー。(図A、B参照)これら事実に裏打ちされた、国としてのポテンシャルとは裏腹に、軍事政権下で欧米諸国の経済制裁を受け、長く鎖国状態が続いたミャンマーに諸外国からの感心が集まることはほとんど無かった。しかし、2008年の新憲法草案承認についての国民投票による可決、それを背景に2011年のテイン・セイン氏を大統領とした新政権の発足を経て、急速な民主化が進展した。
長らく軍事政権に軟禁されていたアウン・サン・スー・チー氏の解放と氏の率いる国民民主連盟(NLD)の勝利により、氏が国会議員として受け入れられたことは、ミャンマー民主化の象徴ともなった。この急速な民主化を受けて欧米諸国がミャンマーに対する経済制裁を次々と緩和、同時にこれまで規制してきた主要産業に対する外資の投資をミャンマー政府が解禁する方針を示したことで、ASEANの中でも最も世界から熱い視線を集める国へと変化を遂げた。
かつては、バンコクの駐在員がヤンゴンへ買い出しに行くとまで言われる程、近代化の進んだ国だったが、軍事政権下で進んだ外部との隔絶によりASEAN各国の成長に完全に取り残されてしまった。国民1人あたりGDPではカンボジアに次いで、ASEANの下から2番目に位置するまで後退している。(図C参照)
国内の現状に目を向ければ、道路自体の密度が低いうえ、その舗装率は20%程度、鉄道網もわずか3, 500km程度、人口のうち電気にアクセスできる割合は約26%と、他のASEAN各国と比較してもそのインフラレベルが極めて低い状況に留まっている。(図D参照)
今後、こうした状況の改善に向けて、各種投資の増加・インフラプロジェクトの推進が見込まれ、政府を挙げての様々なプロジェクトが予定されている。海外投資家にとっては、こうした政府主導の主要プロジェクトへの参画が「ASEAN最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーの潜在成長力を取り込む大きな一歩になることは間違いない。
日本も、2013年1月の対日債務約3千億円の返済免除に続き、5月には追加の2千億円の返済免除、1千億円規模の政府開発援助(ODA) を表明するなど、国を挙げてミャンマーとの関係強化に務め、政府主導の大型プロジェクトへの日系企業の入り込みを側面支援してきた。
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明治学院大学 経済学部准教授