一流の経営者や超優良グローバル企業がなぜ禅にたどり着くのだろうか?
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ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
私は5年前まで上場企業の社長をしていました。周囲からは、おそらく誰が見てもうらやむようなキャリアを歩んでいたかもしれません。そんな私がそれまでのライフスタイル、ワークスタイルを変え、独立起業、現在のコンサルティング会社を設立したのは東日本大震災での被災がきっかけでした。
液状化の影響で大規模半壊となった自宅は26センチ傾き、1カ月半は上下水道が断水、傾いた家での生活は6カ月続きました。会社における事業の復興は進んでも、自宅や家族の心の復興は一向に進まない。そんな自分に違和感、いら立ちを覚えると同時に大いなる「無常感」を感じた私は、真に自分の人生を生きる、後悔しない人生を選択するために独立起業したのです。
独立起業後、自分なりの経営哲学、ビジョンやミッションを語り始めたところある人から強く勧められたのが禅の世界、座禅でした。勧められるがままに禅寺に通い、禅を学び始めると、(今ではすっかり知られていますが)スティーブ・ジョブズ氏や稲盛和夫氏など一流と呼ばれる経営者が禅と深く関わっていることを知りました。またグーグルが社内で「Search Inside Yourself」というマインドフルネスプログラムを実施し社員5万人のうち「10人に1人」が実践していることも知りました。
「一流の経営者や超優良グローバル企業がなぜ禅にたどり着くのだろうか?」その「なぜ?」を探究したくなり、5年前の独立起業と同時に曹洞宗の禅寺で出家得度しました。5年たった今では禅やマインドフルネスを取り入れた、エグゼクティブやリーダー向けの研修や経営に禅を取り入れるコンサルタントとして活動するまでになりました。そんな私が(今振り返れば20年も前から)実践してきたオススメの禅的仕事術を禅語とともに紹介します。
ビジネスパーソンに人事異動はつきものです。私の場合は、2年に一度は人事異動がありました。転勤を含めて「何で今?」「これから調子が上向くところなのに」と納得いかないことが多々あり、人事を恨むこともありました。ただ少し頭を冷やして冷静に考えれば、他人を恨んでも何もいいことはないわけです。足が止まるだけです。足が止まれば成果なんか出るわけがありません。
新しい職場で新しい役割を全うするしか道はないのです。【随処作主、立処皆真】という禅語の意味は「どんなところにいても主体性を発揮し、主人公となって精いっぱい努力をすれば、その居場所や、あなたのやっていることは全て真実となる」です。他責ではなく自責で考える。これこそがリーダーの心構えではないでしょうか。
これだけ世の中に情報が多いと、本当に大切なものが見えづらくなってきます。毎朝膨大な数のメールをチェックし、大量のタスクを管理し続けていると、もともとのミッションや優先順位がぼやけてきませんか? 会議や接客、スケジュールもパンパンになるとゆっくりアイデアを考えるゆとりも失われていきます。
私は月に1度「捨てる日」というのを設けていました。何を捨てるかというと、まずは膨大な過去メール、デスクにある書類、たぶんもう会わないだろうという人の名刺、あまり重要そうでないアポイントなどです。とにかく「捨てる日」には他の仕事はやらず、ただ捨てることだけに没頭していました。そうすると不思議なもので、いろいろな発見があります。「ああこの人に全然連絡をしていなかった」とか「こんないい資料を自分は作っていたんだ」とか。たまにデスクの奥から千円札を発見したこともありました(笑)。
「捨てること」で見えてくるものが必ずあります。【放下著(ほうげじゃく)】という禅語の意味は「放下(ほうげ)」とは捨てること。「著(じゃく)」とは強調。思い切って捨てよ、ということです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授