エグゼクティブリーダーのための禅的仕事術ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2017年11月30日 07時25分 公開
[島津清彦ITmedia]
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3、辞表を書いてみる【覚悟(かくご)】

 皆さんは辞表を書いたことがありますか? 私は26歳の時に会社を辞めたくなって辞表を書きました。そして、その後もその辞表をずっとカバンの中にしまっていつも持ち歩いていました。

 この辞表が実はものすごい力を発揮するのです。組織にいると常に評価される存在ですよね。自分の評価を気にすればするほど、自分の立場を守ろうとすればするほど、ジャッジはリスクのないものになり、安全な選択ばかりするようになります。これは人間の性(さが)かもしれません。

 でも本当に大きな難局にぶち当たった時、周囲の目ばかり気にしていたら、絶対にそんな難局は切り抜けられません。だから辞表を見つめ、自分の立場に対する執着心を捨て「まあ、殺されることはないし、やってダメなら辞めればいいんでしょ」という開き直りが必要です。エグゼクティブの仕事やリーダーの仕事って、本当に重いのです。でもその重さや、がんじがらめの状態から開き直らないと大きな決断はできません。覚とは覚(さと)り、悟も悟(さと)りと読みます。覚悟とは究極の悟りなのです。

4、面談は正面ではなく隣に座ってみる【名利共休(みょうりともにきゅうす)】

 お茶席では、参加者の立場は関係ありません。お互い1人の人間として精いっぱい「場」をしつらえてお茶をたて、おもてなしをします。名誉とか利得(損得)とかはいったん休めて向き合います。

 メンバーと面談する時も相対して、上から目線で話したら、絶対本音は引き出せません。時には隣に座って、同じ目線で胸襟を開いて話してみてはいかがでしょうか。

5、姿勢よく歩く【調身・調息・調心(ちょうしん・ちょうそく・ちょうしん)】

 座禅の基本は【調身・調息・調心】といわれます。ここで注目してほしいのは、この3つのワードの順番です。まず初めに「身体を調(ととの)える」から始まっています。

 心が調うのは最後です。だから落ち込んでいるとき、モチベーションが上がらない時、私は胸を張って姿勢よく歩くようにしていました。最新の科学では、身体を動かすことが脳を作り替えることにつながると確認されています。気持ちを変えたいなら、意識を変えたいなら、姿勢よく身体を動かすのが手っ取り早いのです。

6、集中したい時は耳栓をする【即今・当処・自分(そっこん・とうしょ・じこ)】

 「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」「えー、もうこんな時間?」と全然仕事に集中できず、生産性も上がらずに1日があっという間に終わってしまうということはありませんか?

 私はそんな集中できない時は、飛行機で配られる耳栓をしながら仕事をしていました。目の前の仕事、「いま、ここ、じぶん」ワールドに入って没頭できれば、私の感覚では仕事の生産性が3倍は違っていたと思います。ただ耳栓をすると、周囲の呼びかけに答えられない時があるので、私はデスクに「今、集中しています(耳栓中)」という紙を張り出して仕事をしていました(笑)。ひんしゅくを買うかと思っていましたが、予想に反して耳栓はフロアでブームになりました。

7、あいさつは上司から【挨拶(あいさつ)】

 日本社会では、あいさつは目下の者からというのが常識になっています。でも、本当のあいさつは目上の者からするということを知っていましたか?

 「挨」は押す、「拶」は迫るという意味。つまりあいさつとは「押し迫る」というとても強い言葉です。禅の師匠が弟子に対して日頃からちゃんと修業をしているか、どの程度までレベルが上がったかを確認するために投げかけていた問答があいさつの語源です。

 職場に置き換えてみれば上司が自らメンバーに歩み寄り、その日の調子や、タスクの進捗を確認するために、声掛けをすること、これこそがあいさつの本当の意味なのです。

 プロジェクトマネジャーになると、どうしても仕組みで人を動かそうとしますよね。人間は仕組みだけでは動きません。声を掛け、気を配り、その表情や一挙手一投足を確認しながらコミュニケーションをとるべきです。

8、大切なものは既に自分の中にある【明珠在掌(めいじゅたなごころにあり)】

 ああいう設備が欲しい、こういうメンバーが欲しい、他の会社はうらやましい……。こんな無いものねだりばかりしているマネジャーがいます。私が前職で人事部長をしていた時に、いつも自分の部下の不満ばかり言っているマネジャーがいました。メンバーをとっかえひっかえしたがるのです。

 その一方で抱えているメンバーのマンパワーは決して高いとはいえないけれど、そのメンバーの一人一人の強みを常に探しだして粘り強く向き合っていたマネジャーもいました。

 前者のマネジャーは人望もあまりなく、成果も安定していませんでしたが、後者のマネジャーはコツコツと強いチーム作りをし、最終的には全国でトップの業績を上げるまでになりました。

 大切なもの(明珠)はすでにあなたの手の中(掌)にあることに気付いてください。

 以上、参考になりましたでしょうか? 禅の教えは深いのです。禅の歴史を考えれば当然ですよね。禅とビジネスやリーダーシップというのは、一見まったく関連性がないように思えるかもしれませんが、実は一流のリーダーになるための「知恵の宝庫」だということに気付かれたでしょうか?

 座禅やマインドフルネスで心を調え、禅語の知恵を生かして是非あなたも超一流のリーダーを目指してください。周囲を変えたければ、まず自分が変わることです。

著者プロフィール:島津清彦

シマーズ 代表取締役

人財・組織・経営を熱くする「発熱組織プロデューサー」

前職スターツグループでは、取締役人事部長として延べ6000人の採用面接を行い、急成長する組織の制度と風土改革を実行。その後グループ会社2社の経営トップとして、1社は5年間で約5億5千万円の営業損益を改善。1社は過去最高益を達成する。これらの現場体験から得た経営の「実践知」を日本の企業に広く提供すべく、2012年に独立起業。人財・組織開発・経営コンサルティング会社を設立。同年、得度し仏門入りしてからは、企業・教育機関・官公庁などで禅をベースとしたコーチング・研修・講演活動を行う。2014年にはソニーの新規事業創出プロジェクト第1号案件であるソニー不動産のスタートアップに役員として参画。事業を軌道に乗せた後、現在は自らの会社経営に専念。同時に「ZENエバンジェリスト」として全国を駆け巡る日々が続く。著書に「仕事に活きる禅の言葉」(サンマーク出版)


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