現在のようなマーケット縮小時代は「正しく決定する」よりも、「早く決定する」が求められる。今成功したことが、半年後は失敗するかもしれない。「答えは1つ」ではない。
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私が本書を出版しようと思ったきっかけは、飲食店を筆頭にあまりにも多くのサービス業が新規出店をしては、閉店または廃業を繰り返しているからです。潤沢な資本がある大手企業を除けば、そのほとんどのお店は経営者が莫大(ばくだい)な借金を背負って開業しているのではないでしょうか?
東京商工リサーチの調べによると、1年以内の廃業率は34.5%で3年になると70%だそうです。10年後には90%が閉店もしくは廃業とのこと。3年くらいでは本人の借り入れは残っているだろうし、ひどい時には社員の給料は未払い、取引先の売り掛けもそのままでつぶれてしまう……。
私自身も21年前の30歳の時に、国民金融公庫で当時の私にしては大きな額の借り入れをして起業したのが始まりでした。
起業した当時はマーケットが拡大時代でしたので、ある程度のどんぶり勘定経営でも何とかなりましたが、現在のようなマーケット縮小時代には、「見える化経営」をしなければ利益など残すことはできないのです。
マーケット縮小時代は「正しく決定する」よりも、「早く決定する」が求められる行動なのです。マーケット縮小=成熟していることなので、成熟社会ではあらゆることの移り変わりが早いのです。今成功したことが、半年後は成功しないかもしれません。そして、マーケットに「答えは1つ」ではないのです。
お客さまに受け入れられ、スタッフにもプラスになればそれが「正解」なのです。
だからこそ、「早く決定」して、「早く実行」することが重要なのです。とはいえ、早く実行したからといって全てがうまくいくわけではないですし、失敗する決定のほうが多いことでしょう。それでもなお、「早く決定」して「早く実行」するのです。
なぜでしょうか?
中小零細企業のオーナー社長は、多額の資金を注ぎ込んでいます。何があっても会社を存続させなければならないのです。会社も家族も社員も、全ては社長の両肩に乗っかっているのです。社長は常に全体最適の思考と行動が求められるのです。
一方の社員は、もちろん全員ではないですが、全体最適よりも会社の中での自分の地位や、ライバルとの関係を真っ先に考えるのが普通です。ある意味、給料をもらう側は自分の居心地がよいに越したことはありませんので、偏った決定になりやすいのです。「決定」は社長が行い、「実行」は社員の役目なのです。そして失敗した場合の全責任は社長が負うのです。
それが経営者の覚悟というものです。その覚悟を持った上で、「見える化」を実践しなければなりません。多くの見える化がありますが、ここではわが社で取り組んでいる中から3つを取り上げましょう!
1つ目は「モノとレシピの見える化」です。まずは、見えるモノ(在庫・備品)の見える化をしなければ、見えないモノ(評価・利益)の見える化などは無理だからです。わが社では食料品はもちろん、調味料や飲料類、食器に至るまで毎月棚卸しをしています。なぜかというと、ここまで毎月棚卸しをやると不正が少なくなります。不正というのは「不正をした人」よりも「不正をさせる環境」のほうが問題だと考えています。
人に罪を犯させない環境を作ることも経営者の重要な仕事の1つです。厳しいルールと仕組みを作ることも社員への愛情です。多くの不正は、ちょっとしたことから起きる場合が圧倒的に多いのです。小さな不正から始まり、気が付いた時には手の付けられない不正になっていた。そんなことで大事な社員を失うわけにはいきません。
それと同時に重要なのが、適正在庫です。本来であれば資金化しているものが、無駄な在庫になっている。それは資金繰りを圧迫し利益を失わせている。逆に在庫切れは機会損失で売上ロスにもつながる。よって、棚卸しというのはとても重要であるのに多くの社長はそのことをおろそかにしているのです。同時に社員にも適正在庫の重要性を教えなければなりません。大変なのは最初だけです。習慣にさえすればいいのです。
次にレシピを見える化します。レシピの見える化を実行することで、誰が作っても同じレベルの料理を提供することができます。「人に仕事を付けるのではなく、仕事に人を付けなければなりません」。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授