「ブラック企業」や「働き方改革」にまつわる話題を頻繁に目にするようになったが、では「いい会社」とはどういう会社なのか?
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
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「給与が高い会社」「残業がない、休日が多い会社」が「いい会社」とは限りません。
「休日は世間並み以上、給与も高い」のに、社員がまったく幸せそうでない、という会社も実際に見ます。逆に、「休日は少ない、労働時間長い」「給与が相対的に低い」と思われる会社でも、社員が生き生きと楽しそうに働いていたりします。
およそ30年、企業の人事に携わってきて、また昨今、「ブラック企業」や「働き方改革」にまつわる話題を頻繁に目にするようになり「いったい“いい会社”とはどういう会社なのか」とたびたび考えさせられます。
人事評価や給与、採用や定着に関する相談が増えていますが、いま仮に「等級制度」や「評価制度」があったとしても、それが適切に運用されていなかったり、単に給与を決める儀式にしか過ぎなかったり、形式的に済ませて、社員や会社の成長になんら結びついていないといった事例も多く見ます。「制度があるのに機能していない」という状態です。
私自身も「人事担当」「人事部長」として企業人事を担当しましたが、社員の採用、定着、成長のための施策をよかれと思って導入しても、それが機能しない、効果を生まないということがありました。
本書で事例を紹介しましたが、「休みなく働いた社員に“皆勤手当”を支給したら、かえってモチベーションを落としてしまった」などという笑えない事が多くあるのです。
これらはなぜ起こるのでしょうか。
いろいろな会社を見ていて気付いたことがあります。それは、「社員が会社を信頼している場合は、社員が生き生きと働いている“いい会社”である」ということです。当たり前のようですが、それが実現していない例が多いようです。
では、どういう会社ならば、社員から信頼されるのでしょうか。これは人と人との関係でもよくあるのですが、「その人がどのような人で、どのような価値観を持ち、何を大事にしているのか」が分かっている相手で、それを理解し共感できたら、その人を信頼できるのではないでしょうか。会社も同じです。
「人事ポリシー」は、「会社の、社員に対する考え方」です。その会社が、どのような価値観を持ち、何を大事にしているかを示します。これは会社によってさまざまで、大きく違います。その会社独自の考え方であり、個性です。
企業人事という領域は、「理念」という企業のオリジナリティーの部分と、労働法規や雇用情勢など汎用的な、どの会社にも当てはまる部分の間にあります。人事ポリシーは企業理念、経営理念に近い、社員に対する大切な価値観です。価値観や個性に「良い、悪い」はありません。しかし、それが社員に理解されているか、施策に反映されているか、が大切なのです。
例えば、「求める人物像」はどのような人なのか。「明るく元気で素直」というのは多くの人事担当者から聞く採用したい人材像ですが、それだけではその会社に合う人かどうかは分かりません。「自ら考えて動く人」なのか「周囲を見て協調できる人」なのか。それを伝えなければ本当に求める人と出会えず、入社につながりません。
また、「社員の何を評価するのか」「何に対して給与や賞与を払うのか」の整理も大切です。「成果」「行動」「能力」「勤続」「年齢」「家族構成や住宅状況」なのか……。「今の活躍」なのか、「過去の功績」なのか……。これらは会社によって違います。
採用や評価や給与は、この人事ポリシーに基づき行われます。おそらくどの会社にも、どの経営者にも、人事ポリシーは「ある」と思います。ただ、整理されていないのです。整理されていない状態で、例えば評価制度を導入しても、あるいは給与制度を改定しても、手当を増やしても、人事ポリシーとこれらの各施策の関連性がなく、結局は「仏作って魂入れず」になってしまうのです。採用も同様です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授