ITはあくまでもツールであり、目的は業務を改革すること。小林製薬では、IT部門とSSCを統合した業務改革センターを中心に、「攻めのIT」の具現化を目指している。
「あったらいいなをカタチにする」というブランドスローガンに基づき、医薬品、芳香剤、栄養補助食品(サプリメント)、日用雑貨品など、幅広い分野の商品を生み出し、「消臭元」「熱さまシート」「ナイシトール」といったユニークなネーミングで提供する小林製薬。常に顧客の立場に立ち、顧客の困りごとを解決する手段の実現を考え続けている。
人事担当からキャリアをスタートし、いくつかの役職を歴任して、現在、シェアードサービスセンター(SSC)とIT部門を統括する業務改革センターの責任者を務める小林製薬 グループ統括本社 業務改革センター センター長の藤城克也氏に、IT活用における同社の取り組みや人材育成に対する思いなどの話を聞いた。
――当初からIT分野を担当されてはいないですよね。これまでのキャリアについてうかがえますか。
1985年に入社したときには、希望どおり営業部門に配属され、営業担当として広島営業所に赴任しました。自分で言うのも何ですが、新人としてはそれなりに優秀で、営業成績もそこそこよかったし、取引先にもかわいがられていました。1年目が終わるころ、当時の事業部長に呼ばれ、「人事部門に異動」と告げられました。営業を続けたかったので、いったんは断ったのですが、結局は異動になりました。その後は約24年間人事を担当しました。
――なぜ、営業部門から人事部門に異動になったのですか。
理由は教えてもらえなかったのですが、おそらく入社して研修が終わったころ、人事部長から「人事部に言いたいことがあるか」と聞かれ、かなり積極的に文句を言ったことから、「あんなに文句を言うやつはそばにおいておけ」となったのか、「あれだけ文句があるのなら人事をやらせてみろ」となったのかもしれません。
――私自身も、IT分野を担当する前は経営企画でしたが、そのときはITには批判的なことを言っていました。入社1年目で人事に意見するなど、かなり自由な人だったのですね。
かなり自由でした。母親がおおらかで自由な人でしたので、その影響かもしれません。
――小さいころからでしたか。
これは波があり、小学校のときはクラスの人気者で、自由研究を全校生徒の前で発表するような自由な優等生でした。中学校のときは、バスケットボール部に入ったのですが、先輩と折り合いが悪く、途中で辞めてしまいどん底でした。高校は普通でしたが帰宅部でした。
大学に入り、一念発起してスポーツをやろうと思ったのですが、テニスや野球などは小中高と続けている人たちには勝てないので、今からでもトップレベルになれるスポーツにしようとアーチェリー部に入部しました。
入部の動機は不純でしたが、トップになりたいという意識は強かったので、インカレにも出場し、全国2位にもなるなど、関西ではちょっとした有名人でした。このときに「何でも一生懸命やれば成果は出る」ということを学びました。
――話が少しそれましたが、人事部門の次がIT部門ですね。
正確には、人事部門の次に会社のブランドを社内に啓蒙するコーポレートブランド推進室にいました。このときちょっとした事件があり、コーポレートブランド推進室は半年で閉鎖され、半年ほど仕事のない状態でした。その後、SSCの部長を2年間、IT部門の部長を2年間、本社の経営企画の部長を2年ほど務めて現在に至ります。
――非常に面白いキャリアですね。
ある意味、波瀾(はらん)万丈なキャリアです(笑い)。
――会社に入ってから、物事に対する考え方や仕事に対する姿勢において重要だったことや影響されたことについて聞かせてください。
2つあります。1つ目は、人事部門に異動した経験です。会社の命令だったので、人事部門に異動しましたが、当時の人事部長に「営業に戻してほしい」と言い続けました。そのときの人事部長から、「いやなのは分かるが、“石の上にも三年”という言葉もある。最低でも3年我慢しろ」と言われました。
3年目、4年目ごろに転機が訪れました。「会社の文化を変えなければならない」という人事部長の発案で、「小林製薬をこういう会社にしたい」という思いを若手社員に公募して、その事務局を担当することになりました。集まった若手社員に「小林製薬のどこがダメか」を聞いたところ驚くほど文句が出ました。
そこで、「10年後、20年後に会社をどうしたいか」をディスカッションするなかで、人事もなかなか面白いと感じるようになりました。いやな仕事も、何年かやっていると楽しくなるし、まじめに取り組んでいると誰かが見てくれていて、きちんと評価してもらえることを実感しました。
2つ目は、コーポレートブランド推進室の後、半年仕事がなかった経験です。このとき会社を辞めようと思いましたが、リーマンショックの後で、転職が難しかったため、会社に残りました。落ち込んでいた私をこのとき付き合いがあったコンサルタントの先生に京都のお寺にへ呼ばれました。
そのコンサルタントの先生は、「これまである意味花形部門にいて、苦労していないだろう。会社はいろいろな人が働いていて、さまざまな部門で経験することが人の幅を広げる。腐っていても何もいいことはない」と話してくれました。自分自身も、腐って会社を辞めていく人を何人も見てきたので、いやな仕事でも精いっぱいやろうと気を取り直しました。
――最近、IT分野でも人材育成が大きな課題になっています。いかに素材を生かし、能力を発揮させるかが重要です。人材育成に対する思いをうかがえますか。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授