変化に立ち向かい、競争力を高めるためには、デジタル化をさらに加速することが不可欠NTT DATA Innovation Conference 2019レポート(1/2 ページ)

1億ユーザーを獲得するまでに、活版印刷は150年、LINEはわずか19カ月。企業が変化の大きい時代を生き抜き、より良い社会を築くためには、未来を予測し、能動的に変化に対応することが極めて重要になる。

» 2019年03月06日 10時10分 公開
[山下竜大ITmedia]

変化に立ち向かい競争力を高めるために何をすべきか

NTTデータ 代表取締役社長 本間洋氏

 NTTデータでは、「Accelerating Digital――グローバルの英知で持続可能な社会へ――」をテーマに、「NTT DATA Innovation Conference2019」を開催。主催者講演に、NTTデータの代表取締役社長である本間洋氏が登場し、「デジタル時代の価値創出に向けて 〜Accelerating Digital〜」と題した講演を行った。

 現在、日本政府では、今後の成長戦略における重要な役割を担う政策の1つとして、「Society 5.0」を提唱している。Society5.0では、IoTやAI、ビッグデータ解析などの最新テクノロジーを活用することで、経済の発展と社会課題の解決を両立させ、一人一人が快適に暮らせる社会を実現することを目指している。企業がこのような変化の大きい時代を生き抜き、より良い社会を築くためには、未来を予測し、能動的に変化に対応することが極めて重要である。

 「これまでITは、業務効率化のためのツールでしたが、いまではITなしにビジネスは成り立ちません。さらにITを駆使した企業が、既存のビジネスルールを変革していく時代です。これからのデジタル時代に、イノベーションを起こしていくには、常にテクノロジーによる環境変化を捉え、未来を予測する“Foresight”が重要です」(本間氏)。

 NTTデータでは、2012年より、今後3年から10年の間に大きなインパクトを与える将来の変化を捉えるための「NTT DATA Technology Foresight」を毎年策定している。これは、102の革新技術と政治・経済・社会の60の重要課題をベースに策定された「技術トレンド」「情報社会トレンド」の2つのトレンド情報で構成される。NTT DATA Technology Foresight 2019の内容に基づいて、デジタル時代に企業が行うべきは、どのようなことなのだろうか。本間氏は、「変化に立ち向かい、競争力を高めるためには、デジタル化をさらに加速することが不可欠です」と話している。

橋をデザインしてくださいという頼み方はしないでほしい

 企業は、どのようにデジタル化の推進に取り組めばよいのだろうか。

「最新技術の導入や他企業との共創といったHow toではなく、本来企業が行うべきWhatを思い出す必要があります。企業が行うべきことは『自社の提供価値を再定義すること』や『新しい価値を生み出しつづけていくこと』につきます」と本間氏は述べた。

 Amazon.comは、単なるネット販売ではなく、個々の顧客に欲しいものを推奨する「購買代理業」を行っている。またAmazon GOにより、無人レジによる「新しいショッピング体験」という価値を創造した。さらにUberは近い将来、uberAIRにより無人ドローンによる新しい移動の価値を提供することを構想している。

 本間氏は、「創り出す“価値”は、サービスや製品ではなく、最終的に顧客が感じる“効用”です。自動車を購入する人は、自動車が欲しいわけではなく、その自動車に乗って“気分よく自由に移動する”という効用を求めています。変化の激しい環境下では、提供する価値を継続的に高め続けることが重要になります」と話す。

 それでは、「価値」はどのように創っていけばよいのだろうか。

 本間氏は、「デジタルによる価値を創るとき、最初に考えるべきは「個」を意識すること。不特定多数のユーザーではなく、一人一人のユーザーを理解し、顧客自身も気付いていない深層的なニーズを掘り起こすことも重要です」との考えを示した。

 NTTデータでは、視聴者が商品に興味を持ち、電話をかけるまでの反応を、AIモデル「nAomI(ナオミ)」で学習することで、最も効果が見込める番組構成を予測。入電件数を約30%向上させた。

 また、NTTデータと日本ハム、インターファームの3社は、映像・音声・温度情報などを収集し、AIを活用して豚の飼育管理状況を分析するスマート養豚プロジェクトを展開。豚にとって快適な温度や餌の調整、病気・発情兆候の把握を可能にした。成功事例がある一方で、「固有の価値」をデジタルで創るとき、陥りやすいワナがあるという。

 本間氏は、「ユーザー像をステレオタイプなものと思い込むこと、表面的に聞こえてくるユーザーの声だけでサービスを作ること、技術ドリブンでサービスを考えることは避けるべきです。このワナに陥らないためには、ユーザーの悩みを的確かつ深く捉え、それを解決できる価値を創る必要があります」と話す。

 インダストリアルデザイナーの川崎和男さんは、「橋をデザインしてくださいという頼み方はしないでほしい」と話している。「橋を作って」と言われたとしても、本当のニーズは船で渡ることかもしれないし、海底トンネルを掘ることかもしれない。それを考えるのが“デザイン”の本質である。

 NTTデータでは、「ユーザーへの深い理解」を得るために、2018年にデジタルビジネスをデザインするためのスタジオ「AQUAIR(アクエア)」をオープンしている。AQUAIRでは、コンセプトの可視化からアイデアのプロトタイピング、VRや仮設店舗を使った実証実験まで、ビジネス化の前段階で、ユーザーの反応をきめ細かく確認することができる。

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