変化に立ち向かい、競争力を高めるためには、デジタル化をさらに加速することが不可欠NTT DATA Innovation Conference 2019レポート(2/2 ページ)

» 2019年03月06日 10時10分 公開
[山下竜大ITmedia]
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サービスは早く小さくはじめて大きく育てる

 あるサービスを利用しているとき、利用者がより長期的に価値を感じ続けることが重要になる。長期的な価値を創造するためには、利用状況を継続的にモニタリングし、一人一人の特性に適合したサービスにチューニングすることが必要になる。本間氏は、「その過程で、思いもしなかった新たな価値を見いだすことも可能になります」と話す。

 例えば、コマツの機械稼働管理システム「KOMTRAX」は、センサーとGPSを建設機械に標準装備することで、建設機械の稼働状況を把握することが可能。建機の盗難防止、情報の遠隔管理、現場のスマート化など、順次サービスを追加している。2017年には、NTTドコモなどと共同で建設事業者向けクラウドサービスの提供も開始した。

 またJINSのメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」は、生体センサーが内蔵され、人の目の動きと姿勢から取得できるデータを生かし、ドライバーの目の動きから運転中の眠気を計測してアラートを送るアプリや、全身の筋肉が思うように動かなくなるALS患者が「眼球」の動きだけで電子デバイスをコントロールするアプリを提供している。

 「長期的な価値においても、陥りやすいワナはあります。企業は、サービス提供開始時点で“完成品”を創ろうとします。そのため、PoCのような試行段階においても、ユーザーの反応がよくないと開発から撤退してしまいます。このワナに陥らないためには、“サービスは、早く、小さくはじめて、大きく育てる”ことです」(本間氏)

 サービスを、早く、小さくはじめて、大きく育てるには、アジャイル開発手法が有効になる。NTTデータでは、アジャイル開発の専門組織である「アジャイルプロフェッショナルセンター」を設置することで、顧客企業を支援している。

 企業が提供するサービスが提供できる価値は、ユーザーが求める価値のごく一部にすぎないことが多い。そこで「価値の幅を広げていく」ことが必要。そのためには、他社のサービスと連携していくことが有効になる。本間氏は、「APIなどで、他社のサービスと連携することで、より高い価値を提供できます」と話す。

 2018年に大きな話題となったトヨタ自動車のMaaS専用EV「E-Palette」は、サービス事業者にAPIを提供することで、移動という価値だけではなく、食べる、買う、働くといった、より広範囲な価値の提供を目指している。このように他社と連携する事例もある一方、本間氏は、「広範囲な価値」を作る上で陥りやすいワナは、「品質確保やデータ活用ルールを考慮しすぎて閉じたサービスを創ってしまう」ことだとの考えを示した。

 続けて、「このワナに陥らないためには、過去の慣習や常識を捨て、『自らのサービスを開放し、他社のサービスも積極的に取り込む』姿勢をとることが必要になる」と説いた。価値を創出するためには、個を意識した「固有の価値」をベースに、「長期的な価値」を追求し、より「広範囲な価値」を追求していくことが必要であり、3つの価値のかけ合わせが重要になる。

 NTTデータでは、これまで企業間で共有できなかった受発注情報や出荷・着荷情報を、企業の垣根を超えて共有。サプライチェーン全体の需給バランス情報をリアルタイムに把握できるようにした。また、オープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」やグローバルビジネスコンテストなどで、他社とともに新規ビジネスの創出に取り組んでいる。

グローバルで信頼されるパートナー、イノベータに

 企業において今後デジタル化を加速していくためには、さらに何を行っていくべきなのか。本間氏は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためには、経営戦略・ビジョンの提示、トップのコミットメント、推進のための体制整備と大きく3つのポイントがあります。推進のための体制整備については、当社も全力でサポートしていきます」と話す。

 NTTデータでは、IT活用のフローとして、Detecting(目利き)、Designing(企画)、Developing(つくり)、Driving(活用)の4つのプロセスから構成される「4D Value Cycle」を定義している。また、デジタル時代に必要となる新しいケイパビリティとして、未来予測力、新技術目利き力、戦略企画力、業務改革推進力を位置付けている。

 さらにNTTデータでは、デジタル人財をデジタルの技術的な知識の深さによって「デジタル活用人財」「デジタル人財」「デジタルコア人財」の3つに分類。3つの人財が逆三角形になるバランスが必要という。

 「デジタル人財は、ITベンダー企業、ユーザー企業の双方に必要です。企業の枠組みを超えて、ぜひ一緒にデジタル人財育成に取り組んでほしいと思います。また2018年より、DSO(Digital Strategy Office)を組織化し、グローバルでデジタル技術開発を進めており、デジタル領域の加速も支援できます」(本間氏)。

 本間氏は、「NTTデータは、2018年に新しいビジョン“Trusted Global Innovator”を発表しました。これは、NTTデータがグローバルで信頼されるパートナー、イノベータになるという宣言です。今年もイノベーションのパートナーとして貢献したいと思っています。どうぞよろしくお願いします」と話し講演を終えた。

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