SNS時代に求められるリーダーのリスク・コミュニケーション力ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

事件や不祥事が起きた時や、思うように成果が上がらない時にどのように真摯にユーザーに向き合って説明するか。

» 2019年08月29日 07時05分 公開
[樫野孝人ITmedia]
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『リクルートOBのすごいまちづくり』

 私が地方自治体のアドバイザーとして意識付けをしている戦略的広報は、「マーケティング・コミュニケーション」「コーポレート・コミュニケーション」「リスク・コミュニケーション」の3つで構成されています。その3つ目の「リスク・コミュニケーション」は事件や不祥事が起きた時や、思うように成果が上がらない時にどのように真摯にユーザーに向き合って説明するかというコミュニケーションのことです。

 地方自治体の例では、博多駅前の道路陥没事故が起きた時、福岡市の高島市長の記者会見や対応策は素晴らしかったですし、暴言問題で揺れた泉房穂・明石市長の謝罪会見や辞任タイミングは事件内容の是非はともかく、「火消し」という点でみると見事だったと思います。

 民間企業でも不祥事が起きた時のマスコミ対応が悪く、社長が記者会見で逃げるような発言をして火に油を注ぐ結果となったニュースを私たちは日常的に目にします。吉本興業の5時間半に及ぶ社長会見は誰の目で見てもマイナス効果だったのではないでしょうか。闇営業をし、反社会勢力と関係していた芸人への非難がいつのまにか同情に変わり、擁護する意見が増えていく様を見ると、理屈よりも「社会の空気」や「感情」が社会の評価・評判に大きく影響しているように思えます。これは多分にSNSの影響が大きいでしょう。「モノ言わぬ国民」がSNSという発信、増殖装置を持ったことで、「モノ言う国民」になったのです。

 ネット社会の到来までは、広く情報発信できるのはマスコミだけだったので、マスコミさえ押さえれば不都合な情報を隠すことができました。企業の広報室にもブラックジャーナリズム対策の人材がいたり、週刊誌の記事を金銭でもみ消したりしたこともあったでしょう。しかし、今は国民総事件記者時代。悪事は隠せないと割り切ったほうがいいでしょう。そういう時こそ真摯な態度で、誠実にコミュニケーションをしていかないと一番大切な信頼を失ってしまいます。逆に心からの謝罪会見と再起のための具体的な施策が、早い信頼回復を呼ぶと思うのです。

 では、SNS時代のリスク・コミュニケーションにおける重要なポイントは何でしょうか?

 1、公式発表まで間を空けない(なるべく早い記者会見)

 事件から時間が経てば立つほど、臆測を呼び世間の注目が高まります。その空白の時間が感情に火をつけ、ネガティブ情報の連鎖が起こるので、とにかく早い情報開示が重要です。

 2、真実を明らかにする腹を決める

 分からないことは「分からない」と真摯に応えれば良いのですが、認識している事実を隠してもユーザーはその表情や言い方、しぐさで何かを感じます。つまりうそはバレますし、再炎上の火種になります。内部リーク者も次々に現れます。一つのうそをつき通そうとすると、さらに30のうそを重ねないとそのうそをつき通せません。真実を明らかにする腹を決めるのが一番です。

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