企業は何のために存在するのか? 社会より自社の持続可能性を優先する企業は、市場から退場を迫られている。
“Enhancing quality of life and contributing to a healthier future.”(生活の質を高め、より健康的な未来に貢献する。)2016年、ネスレが創業150周年にあたり明文化したパーパスだ。“Our purpose is to make sustainable living commonplace.”(サステナビリティを暮らしの“当たり前”に)を掲げるユニリーバ。同社では、サステナビリティ関連ブランドが他ブランドの倍速で成長しているという。“クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす”、これはソニーのパーパス。昨年5月の決算説明会で吉田CEOは、“この一年に手掛けたことで、最も重要なことはパーパスを定義したこと”と語った。
「目的」と訳されることの多いPurpose。Cambridge Dictionaryは、“why you do something or why something exists”と定義する。いわば「社会における存在意義」。企業には、「Where(ビジョン)」「What(ミッション)」「How(戦略)」だけでなく、「Why(パーパス)」が求められている。(図A1参照)
なぜ、今、パーパスなのか。消費の中心を形成するに至ったミレニアル世代(注1)の価値観が背景にある。同世代は社会問題への関心や社会貢献意識が高く、企業に経済価値だけでなく社会価値の創出を求める。「利益創出こそ企業の使命」などと言っていられない。社会より自社の持続可能性を優先する企業は、市場から退場を迫られているのだ。
※注1:2000年代に成人あるいは社会人になる世代。一般的定義では1981〜1996年生まれ。米国や中国・アジア新興国では最も構成比が多いとされる。
2017年、ハーバード大学卒業生に向けたFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグのスピーチの一節。“”Purpose is that sense that we are part of something bigger than ourselves, that we are needed, that we have something better ahead to work for. Purpose is what creates true happiness.”(パーパスとは、自分が自分より大きなものの一部であって、自分が必要とされていて、頑張った先により良い未来がある、という感覚のこと。パーパスこそが真の幸福感の源なんだ。)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授