グローバル化とローカル化、効率追求とリスク対応。二律背反の中庸を探るのでなく、二律背反を打破しよう。過去へ回帰するのでなく、未来を創造しよう。
COVID-19後(いわゆるアフターコロナ)の潮流も徐々に顕在化してきた。中でも、「デジタルサプライチェーン」「グロボティクス」「ニューキャピタリズム」の3つは、これまでの企業経営や国際経済の枠組みに対する不可逆な大波となって押し寄せるだろう。(図A1参照)
米国の不動産バブル崩壊に端を発する世界的な信用収縮が実体経済に波及した、2008年の世界金融危機(いわゆるリーマンショック)。流動性制約が最終消費の急激な落ち込みを引き起こし、企業は投資と生産活動の抑制でこれに対応した。供給サイドの調整は最終段階で行われた。
一方、COVID-19パンデミックは企業の生産活動に直接打撃を与え、これが投資と最終消費の落ち込みを引き起こし、さらに都市封鎖などの感染防止策が需給調整の機能不全に追いうちをかけた。リーマンショックの際、13カ月間かけて△2.4%まで緩かに低下した消費者信頼度指数(過去3カ月の移動平均)は、今回わずか4カ月間で△8.6%のフリーフォールを記録した。(図A2参照)
中でも、グローバル製造業の被った傷跡は大きい。グローバルに分散する生産拠点、それらをつなぐJIT(Just-In-Time)サプライチェーン。COVID-19後を見据え、これまでに築き上げてきたグローバルサプライチェーンを見直し、「地産地消」を志向する動きもある。
だが、単なる「時計の逆回転」は何も生まない。グローバル化とローカル化、効率追求とリスク対応。二律背反の中庸を探るのでなく、二律背反を打破しよう。過去へ回帰するのでなく、未来を創造しよう。
鍵を握るのは「デジタル」だ。製品や製造プロセスをデジタルデータで収集し、現実空間を再現した仮想空間「デジタルツイン」上でシミュレーションを繰り返すことで、難解な最適化命題の解にたどり着く可能性は拡がっている。あるいは「デジタル在庫」。製品・部品をデジタルデータ化しておき、緊急時に3Dプリンタで対応する。
実際、米UPSは発荷主から納入部品データを受信、着荷主国の3Dプリンタで製造し納入するサービスを提供している。COVID-19後に求められるのは、グローバルサプライチェーン対ローカルサプライチェーンの神学論争を超えた、自社独自の「デジタルサプライチェーン」の構築だ。
ドイツでの調査によれば、35%の労働者が「より柔軟な在宅勤務を求めて転職を検討する」と回答、43%の企業が「向こう5〜10年で在宅勤務が急速に進展する」と回答している。さまざまなハードルを乗り越え、在宅勤務は着実に進行している。
企業が今後直面する真の課題は、もはや在宅勤務「そのもの」ではない。本質は、在宅勤務とAIの掛け算から生まれる「グロボティクス」(注1)が引き起こす雇用構造の大変動だ。
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