マーケティングは、モビルスーツであるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

マーケティングを学ばずに素手と竹やりで戦い続けるのだろうか。モビルスーツを手に入れて、海外の企業と互角に戦う道を選ぶ時だ。

» 2020年11月19日 07時13分 公開
[永井孝尚ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。


『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』

 マーケティング力の有無で大きな差がつく時代になった。

 しかし「日本のビジネスパーソンは素手と竹やりで、モビルスーツに乗る敵と戦っている。しかもそのことに気づいていない」と話すのは、マーケティングのプロとして「100円のコーラを1000円で売る方法」をはじめ、数多くの10万部を超えるベストセラーを世に出してきた永井孝尚さんだ。2020年11月に『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)を出版した永井さんに、話を聞いた。

素手と竹やりで戦う日本のビジネスパーソン

 「素手と竹やりでモビルスーツに乗る敵と戦っているって、ちょっと言いすぎでは?」と思われるかもしれませんね。しかしこれは私自身の体験です。この状況は現代でもあまり変わっていません。

 30代中頃までの私は「大量の仕事を最速でこなせば勝てる」と考え、現場に密着して製品企画やセールスをしていました。しかし一生懸命やっても成果はイマイチでした。

 その後、勤務先のIBMが新設したマーケティング専門職1期生として、グローバルで展開していたマーケティング研修で学び始めました。その途端に、目からウロコが何枚も落ちました。勝つための戦い方が分かったのです。

 それまでの私には、マーケティング戦略がありませんでした。仕事は速いものの、大量の仕事に忙殺され、ムダも多かったのです。マーケティングの知識があれば、市場を俯瞰的に見て勝てるポイントを見つけ、戦略を立てて飛び道具を正しく使い、余裕で勝てます。本当にやるべきことを決め、ムダなことはしません。

 マーケティング戦略を立てた上で戦えるようになった私は、事業戦略の立案と実施を担当して大きな成果をあげ、会社の成長を実現できるようになりました。独立後はさまざまな業界の人たちにマーケティングを教える立場になりました。また私が主催する永井塾で勝ち方を学んだ人たちは、次々と成果を生み出しています。

 マーケティング巧者の欧米・中国企業は、自由自在にモビルスーツ(つまりマーケティング戦略)を使いこなします。GAFA(グーグル・アップル・Facebook・アマゾン)、テスラ、ネットフリックスといった超優良企業はどこもさまざまな最新マーケティング理論を活用しています。

 マーケティングを学ばない日本企業は相変わらず現場第一主義。素手と竹やりで戦っていて、しかも武器の違いに気がついていません。しかし日本のビジネスパーソンの現場での経験や勘は、まだまだ海外企業に負けていません。モビルスーツを使えば、互角以上の戦いが可能です。しかもこのモビルスーツは、マーケティングを学んで日々の仕事の実戦で使い続ければ、誰でも使いこなせるようになります。使わないのは実にモッタイナイことです。

 マーケティングはキャリアとしても赤丸急上昇中です。先日もファミリーマートのCMO(最高マーケティング責任者)就任が社長就任並みの扱いで報じられました。USJ復活も森岡毅氏のマーケティング戦略によるもの。今後、マーケティングは経営幹部登用の必須条件になるでしょう。

マーケティングを学ぶには?

 マーケティングは、主に米国のビジネススクール(経営大学院、MBA)で進化してきました。100年前、米国で「ビジネスで成功するには幹部に理論を学ばせればいい」と考えた人がMBAをつくりました。私がIBMで学んだマーケティング研修もMBAマーケティングでした。

 マーケティング力をつける近道は、このMBAマーケティングを学ぶことです。

 囲碁の世界で上達の早道は、勝つための「定石」を学ぶことのように、マーケティングでも、まずはMBAマーケティングの基本定石を学べばよいのです。

 ただし注意が必要です。マーケティングは変化が激しいので、10年前は定石でも、いまでは古いものがあります。だから最新のマーケティング理論を学ぶことも必要なのですが、この見極めが難しいのです。どの本を読めばいいか分からないし、多忙な私たちには何十冊も読む時間なんてありません。

 そこでこれらを1冊でつかめるようにしたのが、本書です。

 本書は、定番から最新までMBAマーケティング指南書のエッセンスをまとめた一冊です。世界的に定評のあるマーケティング良書百数十冊の候補から、定番と最新理論をより分けて50冊を厳選しました。この50冊が分かれば、現代のマーケティングには一通り対応可能です。(なおマーケティングへの理解を深めるために、日本人著者の本も10冊入れました)。

 マーケティングを語るのならばこの50冊の内容は最低でも理解してほしいところです。

 ただこの50冊は、難解で分厚い本ばかりです。一方でビジネスパーソンは「要は仕事でどう役立つか」を手っ取り早く知りたいもの。そこで本書は「仕事でどう生かせるか」「分かりやすさ」「面白さ」の3点を重視してまとめました。具体的には、1冊あたり5分でエッセンスをつかめるように50冊の本質を押さえた上で、身近な事例と日々の仕事への指針も加えました。

 さらにマーケティング成功のカギは、俯瞰的に考えることです。そこで本書では、50冊で関連する箇所を参照し合うことで、マーケティングの理解促進も図るとともに、テーマ別に次の6章構成でマーケティングを俯瞰できるようにしています。

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