エネルギービジネスを未来志向で捉え直し、いわゆる純粋なスマートシティだけに解決策を見いださない、多元的な事業機会を模索すべき時期に来ている。
菅首相の「2050年カーボンニュートラル」宣言、欧州を中心にすすむ水素社会、トヨタの「ウーブン・シティ」計画など世界規模のスマートシティブーム。共通しているのは、再エネ由来のクリーンなエネルギーを創り出し、高効率に転換・利用することで、環境にやさしいサステイナブルな社会づくりを目指す事業構想である。
社会的意義として至極正しい方向性だ。ただ、電力・石油業界、総合商社、産業機器メーカーなど幅広い関連プレイヤーと議論していると、産業界が余りにも似た方向に突き進もうとしているように思えてならない。このままでは、同質化競争を招き、レッドオーシャン化、すなわち持続可能な収益を産み出しづらくなる状況が危惧される。
「京都議定書」の影響を強く受けた2010年前後も、スマートシティが世界的なブームになった。当時は、莫大な投資とマネタイズの難しさなどがネックとなり、最終的に下火になったが、この10年で再エネ発電コストは飛躍的に低下し、IoTやEMSなどの要素技術も発展を遂げた。ただ、本質的に差別化・マネタイズが難しいことに変わりは無く、エネルギービジネスを未来志向で捉え直し、いわゆる純粋なスマートシティだけに解決策を見いださない、多元的な事業機会を模索すべき時期に来ていると考える。
エネルギービジネスは電化の一途をたどってきた。古くは、照明・汽車・暖房等のエネルギー源が電気に置換されたが、ここ10年でも、世界の電力消費の伸びは、最終エネルギー消費の伸びを常に上回っている。
電気が使い勝手の良いエネルギー源であることの証左だが、電力はため込むことが難しい。これが、いまだ最大の弱点であり、揚水発電・蓄電池・電解水素など対応手段こそあるものの、いずれもコストが高い。それゆえ、電力需給バランスをいかに均衡させられるか、それでも必然的に生じる余剰電力をいかにためこみ有効活用するかが、重要な論点となっている。これを避けて通ることは難しく、何とか克服できても結果的に差別が難しい。であれば、発想を少し変えてみてはどうだろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授