「リモハラ」「テレハラ」の誤解を生まない作法リモートワーク時代の理想的な職場の仲間との関係性(2/2 ページ)

» 2021年06月09日 07時05分 公開
[相原孝夫ITmedia]
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 「オンラインでの会議やミーティングをする上で、上司との距離感が近すぎると感じたことはありますか?」については、「何度もある」と回答した人が28.2%、「ある」との回答が35.4%という結果となった。さらに、「何度もある」「ある」と回答した人70人に「上司との距離感が近すぎることによりストレスや不快感を感じましたか?」と質問したところ、「非常に感じた」と回答した会社員が41.4%、「多少感じた」と回答した会社員が52.9%という結果となった。つまり、リモートでの上司とのコミュニケーションでは、距離感が近過ぎるがゆえに、ストレスや不快感を感じている人が大半であることが分かる。

 ストレスを感じることの大半は人間関係の問題に集約されるが、難しいのは、つながりがなければないで不安になるし、つながりがあればあったでストレスになったりする。人によって、あるいは状況によって大きく振れる。上司には非常に難しいさじ加減が要求される。そのカギはメンバー個々人の価値観や性質をより正確に把握することである。ダイバーシティの進展に伴って、個別管理の必要性が強調されるようになって久しいが、リモートワークを機に、ますますその必要性が高まったということになる。

上司自身が自分を追い込まないことが重要

 上司としても監視せざるを得ない事情もある。法律上も労働契約法第5条で事業者には労働者に対する「安全配慮義務」が課されている。部下の健康状態を確認せずに、部下が不調になった場合、「債務不履行」や「不法行為」で訴えられる可能性すらある。

 ただでさえ、リモートワークによって会社と個人とが直接にデジタルな関係で結び付けられ、中間管理職はいらないと言われがちな状況にある。そのような中にあって、個々のメンバーの状況が把握できているかどうか、会社から問われているような状況にある。しつこいくらいに何度もオンラインミーティングをセットし、管理しなければならない状況に陥っていたりもする。そうして、上司も部下も双方ともが疲弊していくような状態に陥っている。

 そもそも、今回、まったく予期しなかった事態により、事前の警告も準備もなく、マネジャーたちはバーチャルな職場をマネジメントする立場に立たされることとなった。自分自身も初めてのことで適応するのに苦労しているにもかかわらず、同様の環境下で多くの不安を抱えているメンバーのマネジメントもしなければならない。

 リモートワーク環境下では、マネジャーの仕事のあらゆる側面が高度化し、複雑になっている。これまで、職場で日々顔を合わせる中で、曖昧さを残しながらもなんとか進んでいた業務が、役割分担や優先順位、成果物を明確に決めなければいけない状況となった。メンバー一人一人の仕事の状況や感情など、職場で直接的に観察できたものが、逐一確認しなければならない状況となった。

 当然、個々に進捗状況は異なり、各メンバーのペースやタイミングは徐々にずれてくる。試行錯誤を繰り返しながらも早急にマネジメントの在り方を見直し、調整しなければならない。こうした環境下でマネジャーに掛かる負荷は計り知れない。実際、メンバーよりもマネジャーの方がより不安が強いという調査結果も出ている。

 マネジャー一人で全てのチームメンバーのニーズに応えようとする場合、たちまち消耗してしまいかねない。これは「共感疲れ」や「思いやり疲れ」といわれているものである。リーダーが部下に共感し、個々の環境を理解して、よりよいサポートを提供しようとすると、無意識のうちに体力と精神力を消耗することになる。メンバーよりもマネジャーの方が何倍もの負荷が掛かり、精神的に追い込まれやすい状況にいることを会社も当人も忘れてはならない。

著者プロフィール:相原孝夫(あいはら たかお)

人事・組織コンサルタント、作家、HRアドバンテージ 代表取締役社長

マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン) 代表取締役副社長を経て、2006年4月に当社設立し代表に就任。

慶應義塾大学商学部卒業、早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。

1965年生まれ、栃木県宇都宮市出身。1994年にマーサー社に入社以降、コンピテンシーに基づく人材の評価、選抜、育成および組織開発に関わるプロジェクト、グローバル人材マネジメント、M&A後の人事・組織の融合等のコンサルティングに従事。

HRアドバンテージでは、人材・組織・仕事の可視化を軸にした、人材力・組織力の向上支援に力を注ぐ。旧労働省大臣官房政策調査部研究会委員、総務省研究会委員、日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事等を歴任。

著書に、『バブル入社組の憂鬱』『ハイパフォーマー 彼らの法則』『会社人生は「評判」で決まる』『コンピテンシー活用の実際』(以上、日本経済新聞出版社)、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか 』(幻冬舎)、『図解戦略人材マネジメント』(東洋経済新報社)ほか多数。

日経ビジネススクール、経営アカデミー(日本生産性本部)、早稲田大学ビジネススクール他での講義、講演、セミナーのほか、新聞、専門誌への寄稿、コメント多数。

主な著書に『会社人生は「評判」で決まる』(日本経済新聞出版社)、『ハイパフォーマー 彼らの法則』(日本経済新聞出版社)『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』(幻冬舎新書)など多数。


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