幸福を決めるのは「強度」ではなく「頻度」リモートワーク時代の理想的な職場の仲間との関係性(1/2 ページ)

近年、「幸福度」に関する研究が盛んだ。幸せな従業員は、不幸せな従業員よりも、創造性、生産性が高く、欠勤率、離職率が低いことが分かっている。

» 2021年05月19日 07時09分 公開
[相原孝夫ITmedia]

脚光を浴びる幸福度

『職場の「感情」論』

 近年、「幸福度」に関する研究が盛んだ。内閣府でも2010年から「幸福度に関する研究会」が発足した。先進諸国でも、国家の指標として活用する動きが広がっている。国の豊かさを示す指標としては経済指標のGDP(国内総生産)が主に用いられてきたが、経済的豊かさが幸福感と直接的に結び付かないということが明らかになり、最終ゴールとしての幸福度が脚光を浴びているのだ。

 企業においても、幸せな従業員は、不幸せな従業員よりも、創造性が3倍高く、生産性が30%高く、欠勤率が低く、離職率が低く、組織を助け、外向的で、知的で、創造的で、情緒が安定し、健康であり、長寿でもあるということが分かっている。

 ミシガン大学教授のグレッチェン・スプレイツァーらが安定的に高業績を上げる組織の秘訣について調査したところ、「幸福感を抱く社員はそうでない人と比べて長期にわたって高いパフォーマンスを上げる」ということが明らかとなった。欠勤が少なく、離職率が低く、求められた以上の働きをし、自分たちと同様に意欲の高い人材を引き寄せるのだ。

マイクロムーブが幸福感を左右する

 では、どのようなことが幸福度を高めるのであろうか。心理学者のエド・ディーナーの研究によれば、基本的にポジティブな経験の「頻度」は、ポジティブな経験の「強さ」よりも、幸福度の予測材料としてはるかに優れているという。その経験がどれほど素晴らしいかは、どれだけ多くのいい経験をしているかほど重要ではなく、毎日、ささやかないいことが十数回起こる人は、驚くほど素晴らしいことが1回だけ起こる人よりも幸せである可能性が高いのだ。

 私たちは、1つか2つの大きな出来事が深い影響を与えると想像しがちだが、幸福は無数の小さな出来事の総和なのだ。幸福度を高めるためにできることは、分かり切ったささいなことで、大して時間も掛からない。ただし、毎日続けて成果が出てくるのを待たなければならないのだ。

 こうしたささいな行為のことを「マイクロムーブ」と言うが、職場の同僚との関係性なども、このマイクロムーブに左右されるということが分かっている。

その瞬間には取るに足りないように思われるようなことが、互いの関係に確実に影響を及ぼすのだ。それらがポジティブに働き、関係を近づけることもあれば、ネガティブに働き、関係を引き離すこともある。(※1)

※1:The Little Things That Affect Our Work Relationships, May 29, 2019.

職場に必要なのは、ハイパフォーマーよりもムードメーカー

 職場の状況をよくするうえでは、たまに行う大きなイベントではなく、同僚同士の日々の声掛けなど、ささいな行為こそが有効性が高いのだ。雑談などによってもたらされるユーモアや笑いはさらにパワフルに好影響を生み出す。

 「笑う」という行為そのものが大きなメリットを生むことはよく知られている。また、ユーモアは職場でポジティブなインパクトを持つと、多くの研究が示している。「ペンシルベニア大学ウォートンスクールやマサチューセッツ工科大学、ロンドン・ビジネス・スクールといった名だたる機関で行われた研究によると、クスクス笑いや大笑いをするたびに、ビジネス上のメリットが得られる」と、ハーバード・ビジネス・レビュー誌シニアエディターのアリソン・ビアードはその論文、“Leading with Humor”で述べている。

 職場で誰かが言ったジョークや他愛もない話に大笑いしたり、クスクス笑いをしたりした時、どのような気分になるのか、自身で観察してみるといいだろう。もちろん楽しい気分になるだろうし、職場や職場の仲間たちへの愛着感は増すに違いない。また、その時に取り組んでいた業務に対しても、より前向きな気持ちで取り組めるはずだ。しかし、厚生労働省の統計によれば、「同僚と仕事やプライベートの会話で笑うことがあるか?」との問いに「はい」と答えた人の数は30%にすぎなかった。(※2)

※2:「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」厚生労働省(平成26年5月)

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