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» 2021年06月30日 07時08分 公開

最悪なのは「頑張った者がばかを見る」職場リモートワーク時代の理想的な職場の仲間との関係性(1/2 ページ)

人は、報われるから頑張るのであって、報われないと思ってしまえば、誰も頑張りはしない。

[相原孝夫,ITmedia]

「頑張った者がばかを見る」職場では、職場の関係性が分断される

『職場の「感情」論』

 感情の面から見て、最悪な職場とはどのような職場であろうか。端的に言うならば、「頑張った者がばかを見る」職場ということがいえるであろう。頑張った者が報われるのではなく、報われない、“頑張り損”ともいえる状況である。人は、頑張れば報われるから頑張るのであって、頑張っても報われないと思ってしまえば、誰も頑張りはしない。

 このような職場では、頑張った当人が報われず、バーンアウトのような状態にも陥りかねないばかりか、周囲の人たちの感情も冷えていく。利他的な行為は自らの幸福度を高めることが分かっているが、他者に非協力的な態度を取り続ければ、逆に自らの幸福度を下げることにつながる。それが同じ職場の仲間ならばなおさらだ。当人が孤軍奮闘、頑張っていることを百も承知のうえで、見て見ぬふりを決め込み、非協力的な態度を取り続ける。そんなことが自分の精神状態にとっても好影響を与えるはずはなく、日に日に元気をなくしていくに違いないのだ。

 また、「頑張った者がばかを見る」職場の最も大きなマイナス点は、職場での関係性が分断されるという点にある。熱心に頑張る者に対して協力せず、皆背を向けるわけだから、当然ながら関係性は悪化する。職場での人間関係の悪化や、人と人とのつながりの分断は、心身に深刻な悪影響を及ぼす。頑張る者に手を差し伸べない、支援しないというのは、マイクロムーブどころではない。あからさまな疎外行為だ。それをきっかけとして容易に、ネガティブな感情が支配する職場へと転落してしまう。

 頑張っても報われない、結局はばかを見るという事態を一度でも目にしてしまえば、誰も頑張らなくなる。そうして、現状維持の姿勢が強く、変化を求めない、チャレンジしない職場となっていく。実はそのような職場は意外に多く、そうした職場は冷めている。やる気に満ちた新たなメンバーが入って来て前向きなアクションを起こそうとしても、冷めた意見しか出てこない。例によって、お手並み拝見という態度で、距離を置いてただ傍観しているだけだ。やがてその新メンバーも学習し、同じようなメンタリティとなり、気が付けば、ネガティブな感情が渦巻く職場の一員となっているのだ。

理想は「一緒に働く仲間のために頑張る」職場

 では、感情の面から理想的な職場とはどのような職場であろうか。それは、「一緒に働く仲間のために頑張る」職場といえるだろう。どのような状態かと言えば、個人の成果のためではなく、チームの成果のために頑張る、あるいは誰かの支援やサポートを一生懸命に行うという状態だ。最悪な職場の逆は、「頑張った者が報われる」職場というのも大切だが、むしろそれは当然であり、理想的というまではいかない。報われるために頑張るというのは、個人的な成果や処遇を念頭に置いた活動という域を出ない。「一緒に働く仲間のために頑張る」という行為は、個人の域を超えている。この点が感情の面においてとりわけ重要なのだ。

 グーグル社全面協力のもとに製作された、『インターンシップ』という映画がある。チームとして働く醍醐味(だいごみ)という点で概観できるので紹介したい。この映画は、グーグルの本社が撮影場所に使われているばかりか、グーグルの創業者の一人であるセルゲイ・ブリン氏がカメオ出演もしている。ストーリーは至って単純明快なハートフル・コメディーだ。博士号を持っている社員の割合がNASAよりも高いといわれているグーグルだが、優れた専門性よりも相互信頼や情熱を大切にしているということがうかがい知れる内容となっている。

 腕時計のセールスをしていた、アナログ気質の中年セールスマンのビリーとニックが主人公だ。勤めていた時計店が倒産し、クビになったあとに選んだのが、なぜか、グーグル社のインターンシップだった。希望していたセールスの仕事はなかなか見つからず、職探しをしていた検索サイトであるグーグルの採用情報をたまたま目にしたことからはじまる。IT音痴の中年のオジサン達が、優秀な学生達と競いながらグーグルへの入社を目指す。

 世代間のギャップが本作の笑いのベースになっているが、年齢に関係なく、熱意を持って環境に適応することの重要性を教えてもくれる。そして、チームワーク。特に、多様性あふれるチームを成功に導くカギは何かを考えさせる。最初は、とても折り合いがつきそうにないと思われる面々がチームとなり、しばらくはギクシャクとするが、徐々に相互信頼が育まれ、中年と若者が互いに刺激し合い、長所短所を補い合って、相乗効果を生み出していく。

 6人ずつのチームに分かれ、プログラム終了時に1チームだけが正社員に選ばれるという条件で10数チームが競い合う。ビリーとニックは歳を取っていることを理由に、学生たちから敬遠され、どのチームにも入れず、最後まで残ってしまう。結局、指導役の社員から依頼されたクセのある若手社員のライルが、ビリーとニックのほか、同じくどのチームにも入れなかった3人のメンバーを集めてチームを作ることになった。マザコンで引きこもりのヨーヨー、ネット情報を盲信している生意気なスチュアート、コスプレ好き女子のネーハなど、まったくまとまりのないチームとなった。

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