「睡眠8時間+8時間の断食」で、体重60キロが53キロ、体脂肪率17%が6.6%にITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

間歇的断食により、集中力の増加や認知機能の改善、肥満者における体重減少などの効果が期待できる。断食と聞くと難しく考えがちだが、大事なのは無理せず長く続けること。

» 2021年08月04日 07時02分 公開
[山下竜大ITmedia]
あおき内科さいたま糖尿病クリニック 院長、医学博士青木厚氏

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、あおき内科さいたま糖尿病クリニック 院長で、医学博士である青木厚氏が登場。著書のタイトルにもなっている『「空腹」こそ最強のクスリ(出版社:アスコム)』をテーマに、医師が教える食べ方の新常識について講演した。

正しい空腹の楽しみ方を知り不調を無くす

『「空腹」こそ最強のクスリ』

 勉強会のゴールは、正しい空腹の楽しみ方を知り、不調を無くすことです。

 そこで、まずは皆さんに質問です。

Q1:1日3食、食べていますか? 朝食を食べていますか?

Q2:1日3食、食べた方が良いと思いますか? 朝食を食べた方が良いと思いますか?

 答えは、個々のライフスタイルによって異なります。

 内科学会や糖尿病学会、肥満学会など、医学会では、個人の活動量を考慮して、1日の目標摂取カロリーを設定し、それを3等分して、朝食、昼食、夕食を均等に食べましょうという食事指導をしています。これでうまくいく人もいれば、いかない人もいます。医師として指導をしてきて、本当にこれでよいのかという疑問を常に持っていました。

 そこで考えたのが、「空腹」こそ最強のクスリという発想です。

 医学的権威のある雑誌にも、「規則的に朝食を食べることは体重の減少に有効である」という論文が掲載されていますが、注目したいのはこれが観察研究という方法であることです。観察研究は、一般的にエビデンスレベルとしてあまり高くありません。

 一方、無作為対照比較試験における比較的高いエビデンスもあります。現在の医学界では、朝食を食べることが本当に健康に直結するのかという提言が投げかけられています。

食べ過ぎで疲れる体と空腹が起こす奇跡

 「集中力が続かない」「疲れがなかなかとれない」「お腹周りに脂肪がついてきた」「体重が増加してきた」「お肌の状態がよくない」「かぜをひいてばかりいる」などの症状はないでしょうか?

 人の体は、満腹、空腹、どちらの状態で存在しているのが本来のあるべき状態なのでしょう。人類がこの世に誕生して440万年、常に飢餓と戦ってきました。稲作がはじまった弥生時代は、約3000年前の紀元前10世紀ですが、ご飯を好きなだけ食べられるようになったのは昭和40年以降で、長い歴史から見るとごくわずかの期間です。

 血糖値を低下させるホルモンは、インスリンの1種類のみ。一方、血糖値を上昇させるホルモンは、成長ホルモン、グルカゴン、コルチゾール、カテコラミンの4種類があります。人体は、低血糖に適応できるようにできていますが、飽食の時代に突入して、肥満、糖尿病患者が増加しています。わが国の糖尿病患者は、この40年間で50倍に増加しています。40歳以上では、10人に1人が糖尿病という状況です。

 もともとヒトの体は、エネルギーを蓄えるようにできていて、食べ過ぎることで、胃腸をはじめとする内臓が疲弊し、機能低下、免疫力低下により健康被害が出ます。また、活性酸素の増加で老化したり、脂肪の蓄積で生活習慣病になったりします。そこで、食べすぎで疲れた体を「空腹」で休ませることが必要です。

 空腹は、お坊さんの悟りの境地の一つだと思います。仏教でも、キリスト教でも、イスラム教でも、宗教的儀式には断食が取り入れられています。有名なのが、イスラム教のラマダーンです。ラマダーンでは、初夏の1カ月間、日の出から日没まで一切の飲食を絶ちます。何らかの意味があるからこそ、昔から断食が続けられているのではないでしょうか。

 人のエネルギー代謝は、食直後から食後4時間までのステップ1では、細胞が血液中のブドウ糖を利用します。食後4時間から食後10時間までのステップ2では、細胞が肝臓や筋肉のグリコーゲンを利用します。食後10時間以降のステップ3では、細胞は脂肪(中性脂肪)や筋肉(タンパク質)をケトン体に変換して利用します。

 ステップ1、ステップ2と、ステップ3では、利用するエネルギーが大きく変化します。これを「メタボリックスイッチ」と呼びますが、メタボリックスイッチを起こすことが重要です。さらにステップ3では、オートファジー活性が上昇します。オートファジーとは、古くなった細胞を内側から新しく生まれ変わらせる仕組みです。

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