マネジメントは上司が部下に行うものではなく、上司と部下がお互いのために、力を合わせて行うものである。今回は上司を不意打ちから守る部下の仕事について。
マネジメントは上司が部下に行うものだと定義した人は歴史上誰もいない。マネジメントは上司と部下がお互いのために、力を合わせて行うものである。上司の務めは部下を守ることであり、部下の務めは上司を守ることである。部下の一番重要な務めは「上司を不意打ちから守ること」だ。今回は上司を不意打ちから守る部下の仕事についてお伝えする。
ある会社に、将来は必ず経営陣に昇格すると期待されていた優秀な管理職がいた。社長の側近として活躍していた。社長は技術者出身だった。長年の習慣からか、彼にとってしっくりくるインプットは数字を見てからそのあとで数字の意味を理解することだった。同様に、その社長にとってしっくりくる報告も、まず数字を教えてもらい、そのあとでその数字の意味を説明してもらうことだった。
しかし、その優秀な側近は、上司である社長にとってしっくりくる報告の仕方などまったく配慮せず、自分が報告しやすい方法で報告を行っていた。社長に対して「どのように報告すべきか」ということについて、まったく考えていなかった。彼の報告は常に社長にとってしっくりこないものだった。
必ず経営陣に昇格すると期待されていたその管理職は、経営陣に昇格しなかった。社長にとってしっくりこない報告を行っていたことが原因ではない。社長は彼を経営陣に昇格させなかった理由をこう言った。「彼は優秀なビジネスパーソンだ。しかし、仕事は自分1人で完結するものではない。チームで取り組むものだ。彼は優秀だがそれを分かっていなかったし、分かろうとしなかった。ただ優秀だというだけで経営陣に昇格させるわけにはいかなかった」
このように、報告のやり方一つで、上司から受ける影響の大きさは計り知れない。上司との信頼関係を築くために、次は何をすればいいのだろうか。
ドラッカーは言っている。
報告の仕方を決めなければならない。どのようなときにどのような頻度でどのように報告するかについて決めなければならない。ピーター・ドラッカー
上司に直接聞いて、上司にとってしっくりくる報告の仕方を決めることを勧めたい。上司が好む報告の仕方は、口頭での報告か、それとも書面での報告か。口頭での報告を好むのであれば、結論から聞きたい人か、経緯から聞きたい人か。
書面での報告であれば、詳細に書かれた分厚い書類がいいか、1ページに簡潔にまとめられたものがいいのか、あるいは、図表がある資料をきれいにとじたものがいいのか。
報告のタイミングはいつがいいか。朝出勤した時、つまり常に情報が用意されていることを求めているか。または、1日の終わりに情報が手元にあることを求めているのか。
報告の頻度は、1日1回がいいのか、週1回がいいのか。直接会って報告を聞きたいのか、またはメールを送っておけばいいのか。
1、方法は
2、報告の順番は
3、内容は
4、情報の中身は
5、意見は
6、結論は
7、タイミングは
8、定期的な報告は
これら8つを上司に直接聞いて、明らかにしていこう。ささいなことといえばささいなことだが、その小さな工夫の積み重ねが、上司との信頼関係を築き上げることになる。
ドラッカーはこう言っている。
上司もまた人であって、それぞれの成果のあげ方があることを知らなければならない。上司に特有の仕事の仕方を知る必要がある。単なる癖や習慣かもしれない。しかしそれらは実在する現実である。ピーター・ドラッカー
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授