第6回:コロナとジョブ型に翻弄されるマネジャー達の悩みと、だからこそ気を付けたいことマネジメント力を科学する(1/2 ページ)

コロナ禍で「メンバーマネジメント」「コミュニケーション」「管理」が難しくなり、マネジメントとして当然やるべきことやこれまでやってきたことが、難しくなっている。

» 2022年09月21日 07時09分 公開
[井上和幸ITmedia]

 エグゼクティブの皆さまが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。今回から数回に渡り、キャリア自律やリーダーシップ論を専門とし『起業家のように企業で働く』『リーダーシップ3.0』など著書を多数出版している合同会社THS経営組織研究所の代表社員 小杉俊哉さんと当連載筆者の経営者JP代表 井上との対談の内容から、ポストコロナに向けてのリーダーシップの在り方についてお届けします(2022年02月24日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:ポストコロナのリーダーシップ」)。

コロナによるマネジメントスタイルの変化とマネジャーたちの悩み

 長引くコロナはエグゼクティブの皆さんのマネジメントスタイルにも大きな変化、影響を及ぼしています。

 コロナ期間中でのマネジャーとしての悩みについてトークライブ参加者の皆さんにライブ中に聞いてみたところ、「メンバーマネジメントがしにくくなった」53%、「コミュニケーション量が減った」59%、「労働時間管理がしにくくなった」41%、「自分の業務・タスク管理がしにくい」18%、「キャリアに関して見通しにくい」12%という結果でした。

 「メンバーマネジメント」「コミュニケーション」「管理」が難しくなっているという生の声で、マネジメントとして当然やるべきことやこれまでやってきたことが、しにくくなっている現実がうかがい知れます。

 これまで対面だとその場にいるだけで、話さなくても情報を共有している部分が多くありました。管理職としては、メンバーがそこにいることで様子が見えるし、電話で会話をしているのが聞こえてきたりもします。

 小杉さんは、外資系企業の日本オフィスや海外の企業ではオフィスに出社してもブースで仕事をしているケースが多いので、基本的に立たない限り周りは見えません。一方、日本の場合はたいてい大部屋で仕事をしていることが多く、管理職が島の一番前にいて、みんなが横並びに座っているようなレイアウトが一般的でしょうか。その違いは相当大きいでしょうねと指摘しました。

 もともとブース内で働いていたとしたら、リモートになっても物理的には違和感がないかもしれません。しかし、管理職が大部屋でメンバーを見ていたのがオンラインになると、様子が分からないし環境的にも変化量が大きい。この戸惑いが、コロナ直後から現在に至るまで、特に日系企業のマネジメントの皆さんには連綿と続いているようです。

 また単純に、黙々と1人でPCに向かうのが寂しく感じてしまう人もいますよね。しゃべっていなくても、オフィスで周りに同僚や上司、先輩や後輩がいれば寂しくありません。私もそういう環境のほうが、本当は好きです(笑)。

 話を聞いていると、これが理由でコロナ中もずっとオフィス出社をマストにしている企業も結構存在しているようです。それはそれで、現場メンバーたちが自社のワークスタイルへの対応の仕方やリスク管理について問題やストレスを感じており、それが理由で退職率が上がっているという事象も増えています。

日本企業で「完全ジョブ型」が難しい理由と、ゼネラリストで育った人たちが抱える不安

 コロナ期間中にホットトピックとなったのが「ジョブ型」の働き方や雇用への移行の議論です。

 トークライブ参加者の皆さんにライブ中に自社が「メンバーシップ型」「ジョブ型」どちらかについて聞いてみたところ、「メンバーシップ型」が39%、「メンバーシップ型」と「ジョブ型」のハイブリッドで「メンバーシップ型」寄りが28%。ハイブリッドで「ジョブ型」」寄りが同じく28%。完璧なジョブ型は6%でした。

 多くの日系企業では、新卒や中途採用の若手がメンバーシップ型であることが多いでしょう。ハイブリッドでメンバーシップ型寄りというのは、配属する際にまったく重視しないわけではないでしょうが、あまり専門性を重視せずにジョブローテーションを行うということだと思います。

 ハイブリッドでジョブ型寄りというのは、新卒などでゼネラリストが入ってきて、最初にいくつかのローテーションをすると、その後ある程度リーダーやマネジャーになって専門性が見えてきた時に、その見えてきた専門性を軸にその後の配属やキャリアパスを踏んで行ってもらうというスタイルですね。

 「完全メンバーシップ」と言い切っているところが4割と最も多いのは、多くの日系企業の現状を象徴していると感じます。

 先日、当社のエグゼクティブサーチ事業に40代半ばの人から相談がありました。その人の経歴は、営業、製造、経理、人事、物流と、ものの見事に3年ごとに異動をしているんです。私は浴びるようにみなさんの経歴を見てきていますが、ここまで完璧に3年ローテで40代半ばまできているのは珍しいです。その人は会社に非常に期待されていて、将来の経営者候補として育成されているんだろうなと思いました。

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