本は「目で読む」常識覆す オーディオブック「立ち聴き」から始める読書の秋

すべての人が自由に本を楽しめる環境を整備する「読書バリアフリー」が求められる中、オーディオブックが果たす役割は一層高まっている。

[産経新聞]

　本の朗読をネット配信で聴く「オーディオブック」を試聴できるイベントが東京・渋谷の書店併設カフェ「天狼院カフェ　SHIBUYA」で開催中だ。すべての人が自由に本を楽しめる環境を整備する「読書バリアフリー」が求められる中、オーディオブックが果たす役割は一層大きくなっている。「立ち読み」ならぬ「立ち聴き」で読書の秋を楽しむ体験は、耳を通じて本の魅力に目覚めるきっかけになりそうだ。

耳で読書体験ができる「聴ける本屋さん」＝東京都渋谷区（宇野貴文撮影）

　イベントは「audiobook.jp×天狼院書店本屋さん」。日本一のオーディオブック書籍ラインアップ数を誇るオトバンク（東京）が運営するサービス「audiobook.jp」で配信される8作品を用意した。

　人気アニメ「魔女の宅急便」の黒猫・ジジ役などで知られる声優の佐久間レイさんが読むサン・テグジュペリの名著「星の王子さま」や、朝井リョウさんの小説「正欲」、松下電器産業（現パナソニックホールディングス）創業者・松下幸之助の短編随想集「道をひらく」など幅広いジャンルの作品を揃えた。

　来場者はタブレットとヘッドホンを無線通信でつなぎ、試聴できる。

　自身と同じく重度障害がある女性を主人公とした市川沙央さんの小説「ハンチバック」の芥川賞受賞で、読書バリアフリーは大きく注目されるようになった。オーディオブックは視覚障害者に読書体験を提供するだけでなく、家事などをしながらでも楽しめるという利点もある。本は「目で読む」という常識を覆す力を秘めている。

　イベントは読書週間最終日の11月9日まで。無料。