迷っている皆さんに、これからの営業部長の戦い方ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

右上がりの経済状況から、右下がりの状況になり、またテクノロジーの進化で、いろんな技術が使えるようになるなど、ビジネスパーソンを取り巻く環境が大きく変化している。これからの営業部長はどのように戦えばいいのか。

» 2024年03月28日 07時01分 公開
[北澤孝太郎ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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『営業部長の戦い方』

 長年営業の現場で、その役割の変化を経験してきた北澤さん。昭和のイケイケドンドンの時代から、ものすごく繊細に考えないといけない、この難しい時代の転換期に、営業の皆さんの手引書となるよう『営業部長の戦い方』を出版しました。北澤さんに、営業に求められる役割の変化や、これからの営業責任者の心構え、本書の狙いや込められた「思い」について話を聞いた。

――北澤さんの営業としての今までの経歴と今の仕事を教えて下さい。

 大学を卒業して、リクルートに入社しました。最初、クリエーターで入社したのですが、4カ月目に社運を賭けたINS事業が始まったので、そのタイミングで営業に異動になってしまいます。たまたまその月からものすごく売れたので(「営業部はバカなのか」にエピソード掲載)、それ以来クビにならず、通信、採用広告と教育、大学やスクールの広報で営業の最前線で仕事をして来ました。

 34歳のときに同期で最年少部長になったのですが、何をやっていいのか分らず右往左往した思い出があります。リクルートは、ちょうど20年で卒業し、ソフトバンクで執行役員営業本部長、モバイルコンビニ取締役社長(起業して売却)、丸善取締役を経て、ある外資系のコミュニケーションコンサルに入りました。そのとき、ひどい扱いを受けて生活が維持できなくなり、一念発起して今までの営業を科学してきた経験を執筆しようと考えました。たまたまですが、その2冊がものすごく売れて、日本で初めて営業の授業を大学院でやろうとしていた東京工業大学教授の目に留まり、今年で10年目になるMBAクラスで営業の授業を担当することになりました。数年前からは東北大、昨年から理科大でも教鞭(べん)を執っています。

こんなにも変わった営業の役割や価値観

――北澤さんが営業として頑張っていた時代と今はどんな違いがあると思いますか。

 本書の1章にも書きましたが、右上がりの経済状況から、右下がりの状況になり、またテクノロジーの進化で、いろんな技術が使えるようになるなど、ビジネスパーソンを取り巻く環境が大きく変化しています。更に、コンプライアンスに関することも比較的ゆるかった時代から大きく変化しています。

 だからこそなんですが、2章、3章にあるように、内側を向いて人と同じことをひたすら行うのではなく、外側に心や関心を開いて自分独自の戦略・戦術を作り出すことにこそ活路があります。本書では、なぜそう思えるのか、またどうすれば外側を向き、知識や知恵を取り込み、独自の戦略・戦術を持てるのかを分かりやすく解説したつもりです。今までの著書と合わせて読むと更にその詳細も分かる構成になっています。

 もっと言うと、営業が持っていた本来の意味が、この時代に来て元に戻ったというか本質的にやるべき内容に変質して来たとも言えます。右上がりの状況下で、業務の分業が効率的であったので、営業がセールス化してしまったものを、右下がりになって、本来の意味であるビジネスメイキングに戻ってきたということです。営業は、これからの時代、ビジネスメイキングを意味するものに戻っていくでしょう。

――時代の変化もそうですが、営業パーソンのモチベーションや価値観なども変化しているのではありませんか。その辺のところはどう感じていますか?

 私たちの時代は、多くのビジネスパーソンが生活をもっと豊かにしたいということに対して発展途上だったので、一律に働くモチベーションがありました。しかし、今やその欲しかったものが存在し利用できる環境では、モチベーション設計は上司の仕事に変わったのではないでしょうか。

 つまり、みんながモチベーションが高い状態を当たり前とするのではなく、高い人もいれば低い人もいるということを前提にして、上司側がそれを創って管理していかないと組織がうまく回らないと認識すべきです。

 そして、断絶が起こる最大の原因、若いときは頑張る、年齢を経るとそれを経験をもとに管理するという認識(常識)をあらため、上司も、部下も自分のキャリアや人間性を高める仲間であり、役割は高めたものを発揮できる機会(ある意味権利)であるというあらたな認識(常識)を作る必要があると思います。それを5章の最後の寺山真司の奮闘記に込めました。

 つまり、やらせる人とやる人がピラミッド型に存在しているという組織の在り方から、全員がやる人でその力量に応じて代表、一軍、二軍などに分類される組織(管理の多くをITがカバーする)に変更するのです。そうすれば、世代間ギャップなどという言葉に全員が逃げられなくなるのではないでしょうか。

――営業パーソンに求めるものは、それを受ける側の気持ちの変化とともに変わっていったと思うのですが、営業に求める役割は変わったのでしょうか。

 かつて、世の中の情報が貧困だった時代に、情報提供と引き換えにセールス行為がビジネスと置き換えられたと考えればいいと思います。もっと言うと、需要過多の時代だったからこそ、企業側に主導権があり、営業行為がセールス行為のみでも通用したと言えるのです。

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