ゲームなどのデジタル領域から、トイホビー、店舗展開まで、幅広い事業を総合的に展開するバンダイナムコグループにて、さまざまなIPとファンの接点をより豊かにし、新しい価値を生み出し続けるバンダイナムコネクサス。データ分析により意思決定を支援し、事業に貢献するその取り組みとは。
アイティメディアが開催したオンラインセミナー「ITmedia DX Summit Vol.20」の基調講演にバンダイナムコネクサス CDAO(Chief Data Analytics Officer)データ戦略部 IPストラテジーオフィス長の西田幸平氏が登場。「データ活用でエンターテインメントの未来をつくる」と題して講演した。
データユニバース構想に基づき、バンダイナムコグループの事業にかかわるデータ活用を推進するバンダイナムコネクサス。各種予測による投資判断や商品企画支援、マーケティングやプロモーションへの活用、既存サービスの運用分析、基盤構築、事業横断の分析など、さまざまなデータ分析業務を推進し、幅広い分野で成果を上げている。
バンダイナムコネクサスにおける分析業務の成果の定義について西田氏は、「成果の定義は会社により異なりますが、当社では、例えば機械学習や生成AIを導入しただけでは成果とはいいません。関わる立場によって追い求める成果は異なるものの、組織としては、顧客満足度が向上したり、ビジネス上の利益貢献をするなどして初めて成果と捉えます」と話す。
「成果」という言葉だけでは、社員の共通認識を持ちづらいことから、さらに成果物、評価、効果、利益貢献額の4つに分類し定義している。「成果物」は、報告書や予測モデル、ダッシュボード等、「評価」は、対面する現場にどのように評価されたか、「効果」は、“新規顧客を増やした”、“CVRを上げた”など、分析や施策により起きた結果、「利益貢献額」は、効果を金額換算したものを指す。
西田氏は、「評価は主観的なものですが、効果は客観的であることが必要です。また、効果と利益貢献額は必ずしも一致しません。新規顧客を増やすことと、それによる利益貢献は直接的ではないからです。効果は測定しにくいのですが、測定する努力をすることが重要です。何を持って効果とするのか、顧客体験にどのような変化をもたらして貢献するのか、お金に換算するとどれだけの貢献になるのか、ビジネス側の担当者とも計測や算出方法を協議し、合意のもと進めるようにしています」と話す。
成果を出すためには、分析力だけでなくビジネス力も不可欠で、このビジネス力は分析の「外側」と「内側」でそれぞれ必要となるスキルが異なる。
まず、分析の「外側」で必要なスキルは、業務知識やデータの捉え方を含めた、分析に必要な情報を収集する力、業務プロセスの全体像を理解した上で分析結果を業務に落とし込む力、成果に対してやるべきことを見極める力である。
ここで注意したいのが「なんとなくやった方がいいこと」が「いま目の前」にあり、「そのアウトプットが明確である」ときだ。例えば、ダッシュボードでデータを可視化しますといえば誰も否定はしないだろう。しかし、ダッシュボードという明確なアウトプットがあるが故に、分析官と現場双方の満足度・達成感が高くなり、次から次へとダッシュボードを作り続けることになっていないだろうか。「ビジネスへの利益貢献」という追求すべき成果に立ち返り、それに向けてやるべきことを見極める力が欠かせない。
一方、分析の「内側」で必要なスキルとは、ミクロな視点とマクロな視点を行き来しながら業務を遂行する力である。例えば、顧客を性、年代、接触メディアとどんどん細分化して分析し、最下層に対する効果的な施策を見つけたとしても、実はその集団は全体の数パーセントだった、というケースは多い。このような結果を避けるには、ミクロに細分化して分析をしつつ、マクロな視点に戻ってインパクトを出せる成果を考える能力が必要となる。
「あるカップラーメンの工場で、カップにうまく麺が入らず、大量生産が困難という課題を抱えていました。最終的に“置いてある麺の上にカップを被せる”という方法で解決しましたが、“置いてあるカップに上から麺を入れる”という前提のもと、それをどう解決するかを考え続けても前述の解決方法を思いつくことはできなかったでしょう。コロンブスの卵とまではいかなくとも、課題を違った角度から分析することも重要になります。ただ、これらのビジネス力すべてを1人の分析官で担うことは困難です。そこで重要となるのが、成果を出すための組織づくりです」(西田氏)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授