去年よりも今年、今年よりも来年、1人当たりの付加価値生産性を高めることを経営理念の最上位に置き、これに徹して経営や事業を推進している。
エグゼクティブの皆さんが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。
高付加価値経営や生産性の高い組織開発をどのように実現するかについて、ベストセラー『付加価値のつくりかた/一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』の著者、カクシン代表取締役CEOの田尻望さんと当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容からお届けする第3回です。(2023年11月16日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:キーエンスに学ぶ!高付加価値経営はこうして実現する」)
売上1兆円に迫ろうというキーエンスが、規模拡大を継続しながら高収益を保ち続けていることは驚異としか言いようがありません。
この事実に対して田尻さんは、もしキーエンスがいまよりも営業利益率を下げて30%や40%で展開していたとしたら(それでも一般企業からすればとてつもない高収益ですが)、おそらく売上規模は今の5倍や6倍、もしかすると10倍あるかもしれないと言います。
しかしキーエンスは「最小の資本と人で最大の付加価値をもたらす」という経営理念のもと、去年よりも今年、今年よりも来年、1人当たりの付加価値生産性を高めることを経営理念の最上位に置いており、これに徹して経営・事業推進しています。
そういう意味では、おそらく最大のポテンシャルに対して考えると、実は規模拡大はしていません。ここにひとつ、キーエンスがどのような経営に徹していて、それが超高収益をもたらしているのかという鍵があります。
このキーエンス流の経営に鑑み、田尻さんは、例えばベンチャー企業で規模の拡大を志向し焦って人を増やそうとする会社を見ると、「やめておいたほうがいいのにな」と思うことが度々あると言います。
例えば1人当たりの付加価値生産性、いわゆる1人当たり粗利益高が1000万円以下の会社が「もっと人を増やさないといけないと思っているんですよ」と言っていたら、「まぁ、待ちましょう」。
1人当たり粗利益が1000万円ない状態で人を増やしたところで、1人当たりの取り分が減るだけです。高付加価値化ができていない状態でそれをやってしまうと、人を増やした時にクオリティが落ちて、1人当たり粗利益高が600万円、700万円になったらもう利益は残りません。
逆に今いる人たちでもっと高回転できる仕組みにして、同じ人数で1人当たり付加価値生産性、粗利益が2000万円までいった状態で何人か雇うのなら、理解できます。
1人当たり500万円という年収を与えるとすれば、雇用することで1人当たり粗利益高が1500万円ぐらいまで落ちる。「そこからまた2000万円まで粗利を高め、その上で追加の雇用をするなら分かるのですが、順番を間違えている会社が多いなと感じます」(田尻さん)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授