第37回:Z世代は上司のどこを「分かっていないなぁ」と思っているのか?マネジメント力を科学する(1/2 ページ)

「分かってないなぁ」と思われるさまざまな言葉があるが、「Z世代だからお前はこうなんだろう」と、十把一絡げで世代論で語ると「分かってないなぁ」につながってしまう。

» 2025年04月28日 07時08分 公開
[井上和幸ITmedia]

 エグゼクティブの皆さんが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。

 今回からは、今や上司の定番お悩みとなっているZ世代のマネジメントについて、人材研究所・代表取締役の曽和利光氏をゲストに迎え、当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容からお届けします。(2024年7月23日(火)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:上司としての悩みを一掃する!Z世代を育てる・人を動かす・転職で成功する、上司コミュニケーション術」)

Z世代は、上司のどのようなところを「分かっていないなぁ」と思っているのか

 冒頭からいきなりですが、Z世代部下は上司を見て「分かっていないなぁ」「まどろっこしいなぁ」「責任感がないなぁ」「古くさいなぁ」「頭が固いなぁ」と感じています。

 総じて、上司として言っていることとやっていることの矛盾が及ぼしていることが多いでしょうか。

 「端的に話そう」と言いながら、自分の話がまとまっておらず、気がついたらとうとうと部下に語ってしまうなど、ありませんか?

 「君はどうしたいの?」「まずはやってみて」、あるいは逆に「分かった。やっておくよ」「よし、がんばってみろ。俺が責任を取ってやるから」……これらの部下へのメッセージ、投げかけは、上司としては肯定的に部下を励まそう、支援しようと使っているフレーズです。

 しかしこれが令和時代はすべてNGだと曽和さんは言います。

 「状況を理解していないのに言葉だけ、というケースがあり、それが見透かされている。「気持ちはよく分かるよ」と言ったら、「分かるわけないだろ!」。「責任を取る」とはいったい何のことか? ということですよね」(曽和さん)

 リクルート用語でも「お前はどうしたい?」がありますが、本来、これは部下に任せて主体的に業務に関わることができるようにするものです。しかし、場合によってはその場の逃げやマネジャーの逃避の心が中にあって、それをこういう一見するといい言葉でくるんでいることもあるわけです。

 実はそれをメンバーは見透かしているという構図が多いのです。

 ですから、言葉尻だけを捕らえて「気持ちはよく分かるよ」「君はどうしたいの?」と言うことが全てダメというわけではありません。

「気持ちはよく分かるよ」というのを、日々の部下の行動や考えをきちんと観察していたり、信頼関係があったりする上で言っているのであれば、それはすごく良い影響を部下に及ぼすでしょう。

「俺が責任を取る」とは、どういうことか?

 最近は特にプレイングマネジャーも増えたりリモートワークになったりして、「お前に何が分かる」って思われるような状態の関係の中で、「気持ちはよく分かるよ」と言ったら、「分かるわけないだろ!」みたいな感じになるのです(苦笑)。

 「俺が責任を取る」にしても、本当に最後の最後まで面倒を見る上司もいるでしょうし、その覚悟が伝わっている上でだったら、何も問題ないどころかすばらしいのです。メンバーを守るために上と戦ってくれていた歴史があるのかどうかとか、「責任を取る」とはいったい何のことか? ということをZ世代部下は問うているのです。

 「例えば土下座奉行みたいな感じで、「『すみませんでした!』って謝ってくれても、別に僕たちはうれしくないんですけど。どうせ評価が悪くなるのは僕でしょう? みたいな状況だとすると、すごくきれいな言葉であるがゆえに揺り戻しが大きい感じかなと」(曽和さん)

 上記のような「分かってないなぁ」と思われるさまざまな言葉がありますが、難しいのは十把一絡げで世代論で語ったりすると、特に最近では「Z世代は……」みたいな話で世代論がよく出てきますが、Z世代のことを分かろうと勉強すればするほど、彼らに対してのステレオタイプが出来上がっていって、本当は1to1で見なきゃいけないのに、「Z世代だからお前はこうなんだろう」みたいになってしまいます。これがまた、「分かってないなぁ」につながっているのですよね。

真面目に理解しようとするがゆえに陥る、ステレオタイプのわな

 ステレオタイプに見てしまうのは、真面目に理解しようとするからこその落とし穴です。最大公約数で見てしまってステレオタイプになってしまいます。

 Z世代は、インド人は、女性は、リクルート出身者はなどです。

 共通点や傾向はあるとはいえ、特に上司部下の関係性では、やはり個別に見ていないと気持ちは理解できないしつかめないですよね。

 これ、今どきだと外国人と働く場合も増えていますが、実は外国人と共に働くという観点でも一緒です。例えばベトナムの人や中国の人アメリカの人と働いていると、その国の文化を勉強して理解しようと思うでしょう。

 ところが、「インド人ってだいたいこういう人だよね」みたいな感じで思っても、インド人は14億人いて、いろんなインド人がいるわけです。

 インド人は「みんな数学ができる」のかといえば、優れた人もいれば苦手な人もいます。

 「サッカーが下手なブラジル人も、いるとはずです。例えば、僕も転職してライフネット生命に行った時に、“リクルートから来たってことはおもしろいやつなんだろう”と見られていたんです。“僕、リクルートではつまらないほうでした”みたいな感じでした(苦笑)」(曽和さん)

 真面目にいろいろと理解しようとしたときに、ステレオタイプで見てしまう。動機が善なのに、そういう落とし穴があるということです。

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