さて、次に上司に対して「まどろっこしい」という問題です。
この20年ぐらいで、マネジメントの中では「自由と自己責任」という言葉がすごく使われるようになってきました。これもまた、動機は善で、要は自分でやりたいことをやって良いよ、そのかわりその責任は自分で取ろうね、と。
この「自由にやっていいよ」というのが、若手からすると脅迫なんです。
「守破離」という言葉があります。最初は型を守って、徐々に自分らしさを出していって、最後は離れてオリジナルスタイルを作ることです。
仕事を任せるのにはステップがあるわけですが、その最初の型みたいなものを示してあげないうちに、いきなり「自由にやってみろ」と。先ほどの「とりあえずやってみてよ」もそうですが、上司には、型にはめるということ自体がなんとなく時代的にはネガティブなんじゃないかという思い込みがあります。「言われたとおりに、まずはこれを繰り返したくさんやってごらん」みたいなことは嫌がる世代なんじゃないかな? と。
これも、動機は善だと思うのです。しかし、型がない中で「自由にやってみろ」と言ったら、Z世代部下からすると単に足が止まるだけなのですね。
「昔、リクルートの採用のキャッチフレーズで“自由に生きなさいという脅迫に負けるな”というものがあったんですが、まさに“自由にやっていいよ”というのは、若手からすると脅迫みたいな感じになってくるわけですね。だから本当は、まずは型にはめてあげるというか、“いったんこのやり方でやってごらん”と言ってあげる」(曽和さん)
さらに言えば、今のように変化が激しい世の中では、「自由にやってごらん」と言っているマネジャーにも腹案がないケースがあります。自分も分からないから、「イチから十まで指示してごらん」と言われてもできず、自分も腹案がないくせに、「自由にやってごらん」と言うのは仕事放棄と言われても仕方がありませんね。
自分でもできるし、イチから十まで何をすればよいかを指示することもでき、その上で「じゃあ、やってごらん」になっているでしょうか。山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」のように、「やってみせ」がないのに、「やってごらん」と言っていませんか。
ですから本来ならば、最初の最初はイチから十まできちんと「こういう順番でやるんだよ」と言語化や形式化して伝えなければならないのを、「とりあえずやってごらん」と言い、それで、やったことやアウトプットに対してああだこうだケチだけつける上司は、いまはものすごく嫌われるわけです。
特にリモートワークで、机を横で並べることがなかなかできない、いわゆる非同期の働き方〜時間も空間も違う中でチームワークでやらなければならないときには、言語化の重要性はすごく高くなってきているのです。
なのに何の具体的な腹案を持っていないくせにやらせておいて、来たものに対しては「いやぁ。なんかぴんと来ないんだよなぁ」など抽象的な言葉で返すと、若手のほうも「いや、ぴんと来ないって何だよ。それが違うっていうんだったら最初から言ってくれよ」みたいなことになるわけです。
Z世代はここいら辺にコミュニケーション上のまどろっこしさを感じることが多いのですが、上司の皆さん、お気づきですか?
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授