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» 2022年11月22日 07時01分 公開

第8回:リーダーシップスタイルの変遷と、いま自社が取るべきリーダーシップスタイルを見極めるマネジメント力を科学する(1/2 ページ)

大きな時代の流れ、変遷に伴ってリーダーシップスタイルが変化してきている。

[井上和幸ITmedia]

 エグゼクティブの皆さまが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。

 前回に続き、キャリア自律やリーダーシップ論を専門とし『起業家のように企業で働く』『リーダーシップ3.0』など著書を多数出版している合同会社THS経営組織研究所の代表社員・小杉俊哉さんと当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容から、ポストコロナに向けてのリーダーシップの在り方についてお届けします(2022年02月24日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:ポストコロナのリーダーシップ」)。

米国・日本におけるリーダーシップスタイルの変遷について

 小杉さんと経営者JPは、2011年に経営者・幹部の方々対象のワークショップを行い事例検証と当事者に当たる方々からのFBも交えてリーダーシップ論をまとめました。それが2012年に小杉さんが著書で発表した「リーダーシップ3.0」です(『リーダーシップ3.0』小杉俊哉・著/祥伝社・刊)。その後2015年には更に「リーダーシップ4.0」も発表。これらについてご紹介したいと思います。

※「リーダーシップ3.0(R)」は、株式会社 経営者JPの登録商標です(登録番号:第5435135号)

※「リーダーシップ4.0(R)」は、株式会社 経営者JPの登録商標です(登録番号:第5934148号)

 この理論は、大きな時代の流れ、変遷に伴ってリーダーシップスタイルが変化してきているということを捉えたものです。

 まず「リーダーシップ1.0」として、その原型となる中央集権的なリーダーシップの在り方が、本当に長い間続きました。王様、荘園領主、日本では藩主などです。こういう人たちが強大な権力によって、下々の者を従える。これがリーダーシップでした。

 このリーダーシップの在り方を産業界に持ち込んだのがヘンリー・フォードです。彼が職人さんたちを連れてきて、ベルトコンベアを使って決まった作業をやらせるという方法を導入しました。

 彼が参考にしたのは当時、世界最強といわれていたプロイセンの軍隊です。そのやり方で、職人さんたちに「今の年収の3倍を払うから来い」と言って、彼らを機械の一部にしてしまったのです

 小杉さんがトークライブで面白いエピソードを紹介しました。

 「最近読んだ本で興味深かったのですが、ヘンリー・フォードは「私は『手』が欲しくて職人を雇っているのに、なぜ『頭』まで付いてくるんだ」とぼやいていたということなんですね。余計なことを言ったり考えたりせんでいい。ただ手を動かせばいいと思っていたことが分かるエピソードですよね。“機械として動いてくれ。仕切るのは俺だ”ということですよね。世界の製造業の近代化に、非常に大きな貢献をした人ですが、彼はそういう発想だったんです。まさに中央集権的ですよね。今でもオーナー経営企業にはこのかたちが多いと思います。“文鎮型組織”とも言えます。“Command and Control”ですね」。

 その後20年ほどたった1920年代後半、GMのアルフレッド・スローンが「1人の人間が全部仕切ることはできない」ということで、権限を与えてやらせる「分権」を開始したと考えられています。

 さまざまな事業に分けて、それぞれに責任者を任命してやらせる。権力が背景にあることは変わりません。日本では松下幸之助さんが事業部制を始めたのとほぼ同時期の1920年代後半です。これが長らく世界中のお手本として続きました。この段階を「リーダーシップ1.1」と位置付けました。

 更に1960年代ぐらいから台頭してきたのが「調整型リーダー」という在り方で、1990年代の初頭まで続きます。これがまさに日本的な、家父長的なリーダーです。いわゆる運命共同体の船長ですね。

 終身雇用、労使協調で、年功序列な給与運営をするというもので、「会社側が社員の面倒を生涯みてやるんだから、言うことを聞け」と。会社が自由に人事権を持って配置するというリーダーシップスタイルで、これを「リーダーシップ1.5」と名付けています。

 1980年代に刊行された『エクセレント・カンパニー』では、アメリカやカナダのエクセレントな会社には全て、調整型のリーダーがいて、こういう会社がサステナブルだと説きました。この本は世界的なベストセラーとなりましたが、日本的なリーダーはこの時代のお手本だったわけです。

 実は80年代のアメリカ企業も、GMやIBM、DECなど、当時、超優良企業と言われたところは全て日本的経営でした。まったく同じかたちではありませんが、長期雇用ベースで、労使協調で、年功的な給与運営で基本的には「会社が面倒をみてくれる」というスタイル・制度でした。アメリカでもこうした「家族主義経営」がいい会社でした。

 そして1980年代後半から1990年代に入るところで、日本企業の躍進などもあり、米国企業では「そんな生ぬるいことをしていたら会社が潰れるぞ」と「チェンジ、チャレンジ、イノベーション、トランスフォーメーション」が叫ばれるようになりました。「自転車を漕ぎ続けろ」ということで出てきたのが変革型リーダーで、これが「リーダーシップ2.0」です。

 それをけん引したトップたちは、キャラクター的にカリスマリーダーでもありました。代表的にはGEのジャック・ウェルチやIBMのルイス・ガーナーで、彼らのようなリーダーシップスタイルが世界を席巻しました。この時代、日本企業のトップもまねする人が多かった。しかし、生え抜きのトップが多い日本企業で、この痛みを伴う変革のリーダーとして成功した例は残念ながら少なかったのが事実です。

 今世紀に入ってからは、トップが率先垂範するチェンジリーダーという旗をおろし、リーダーは支援する側に回って一人一人の力を引き出すようになりました。米国企業がこのスタイルになり、ハーバードビジネススクールなどでもこのスタイルを推奨するようになりました。これが「リーダーシップ3.0」と呼んでいる支援型のリーダーシップなのです。

企業ステージごとに変わるリーダーシップスタイル

 小杉さんが『リーダーシップ3.0』で伝えたかったことは、その当時、日本企業の経営者や幹部、あるいは関連する識者がこぞって、ステレオタイプのリーダー像にこだわりすぎていたことへの警鐘だったそうです。

 「創業経営者でもない限り、そんなカリスマ性もないのに、まねできるわけないでしょう。メンバーシップ型で入った日本の管理職や経営者が、カリスマになれるわけないですよね。そこで“もっと楽にリーダーシップを発揮できる『支援型』もあるんだよ”ということを提示したんですね。支援者が一人一人と向き合って力を引き出し、動機付けをして、伸ばしていくと」。

 そしていま、トップやリーダーのみならず、働く全ての人たちが自分自身の仕事の仕方やキャリアについて、自律的に切り開いていくことが必要な時代になってきています。全ての構成員が自律的に働くということですね。

 立場の上下に関係なく、自分自身に対して、また他者に対してもリーダーシップを発揮する。組織全体、社会全体に対してもこれを発揮する。今はこんなことが必要になってきています。これを「リーダーシップ4.0」と呼んでいるのです。

 この「4.0」を発信し始めた後に、追いかけるような形で登場したのが「ティール型組織」(役職者の監督あるいは干渉なしで、各メンバーが自ら企業のゴールを目指し、まい進する組織)です。

 流れを先行していたのはアスリートの世界かもしれません。かつてのような鬼コーチの絶対命令でトレーニングするような形はおおむね姿を消し、選手自身が考え、監督やコーチと相談しながらトレーニングを積む。そうした選手がどのスポーツでも高成績を残しています。

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