小杉さんは言います。
「リーダーシップというのは“The most studied, and the least understood area. ”と言われています。要は“研究されつくしているのによく分かっていない分野である”と。それでも、こういう整理の仕方をしておけば、“今、組織がどんな状況で、どんなリーダーシップが必要なのか”と考えるよりどころにできますし、どんなリーダーシップスタイルを取ればいいかという1つの指標になります。そこがいい点ですよね」
ここで1つ、読者の皆さんに伝えたいことは、「リーダーシップ1.0」から「リーダーシップ3.0」「(リーダーシップ)4.0」への移行は発展・進化であると捉える人も多いと思いますが、例えば「1.xよりもやっぱり3.0がいいんだ」と捉えるのは誤解でもあります。
企業のステージや局面によっては、「3.0」よりも「1.x」「2.0」が望ましいケースは、非常に多くあります。例えば、創業時の組織体制が未整備な状態であれば、まずは業務統制のために「1.x」スタイルで行く必要がありますし、大きな変革を必要とするフェーズではトップが「2.0」スタイルで全社をリードする必要があるでしょう。
トークライブでは参加者の皆さんに、自身の会社がどのスタイルかを聞いてみました。結果は、「1.0」はなしで、「1.1」が13パーセント、「1.5」が33パーセント、「2.0」が20パーセント、「3.0」が33パーセント、「4.0」がなし、となりました。
「1.5」と「3.0」が3分の1ずつ。2割が「2.0」、1割が「1.1」。少し前までは圧倒的に「1.5」が多かったところから、令和前後あたりから「3.0」が増えてきた印象です。多くの経営者・幹部のみなさんがそれを目指していて、「完全ではないにしろ、ある程度やれている」という人が増えてきている感じです。
一方で、メディア等に多く登場する経営者、特にオーナー経営者が多いですがビジョナリーかつトップダウンという方が「2.0」スタイルですね。
先に紹介した通り、もともとの日本的経営のお家芸でもあった「1.5」と、近年のスタイル「3.0」。
経営者からすると、全体を管理統制しつつも現場を生かす「1.5」は継続安定を志向するタイプの多い日本企業組織において、今後もそれで(それが)いいのではないかという意見も聞かれます。
しかし「1.5」における負の側面が、社内が村社会化することから起こる象徴的な出来事にあるのです。会社への行き過ぎた忠義から無理をしてしまい、過労死などの労務問題。組織ぐるみでのデータ改ざんや品質偽装、粉飾決算。幹部が悪意なく「これは我が社のためなんだ」みたいな内向きの論理で動いてしまう。
内部に自浄作用が働かず、“閉じた系”の中で完結していた時代はもはや終わったと思います。そもそもそれではやっていけないし、ネット社会で開かれた情報社会の中で、そうした内部のひずみは必ず外部に露出されてしまうでしょう。今となっては「1.5」はなかなか難しくなっていると言わざるを得ません。
名経営者・名監督がやっていることは、組織の状況に応じてTPOに合わせたリーダーシップスタイルを選択することです。皆さんも、自社に最適なリーダーシップスタイルはどれか。その望ましいリーダーシップスタイルを取ることができているか、ぜひチェックいただければと思います。
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授