第19回:企業・組織から自律していく人たち。そんな自律型人材に愛される組織を作るポイントマネジメント力を科学する(1/2 ページ)

個人も、世の中がどう変化するのかを自分で考えながら、自分の本当にやりたいことに近づく準備とアクションを自分でするべきだし、しなければならない。

» 2023年10月24日 07時03分 公開
[井上和幸ITmedia]
『こうして社員は、やる気を失っていく』(Amazon)

 エグゼクティブの皆さんが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。

 自社のメンバーたちがどうすれば生き生きと働き、自ら動く組織となるのかについて、ベストセラー『こうして社員は、やる気を失っていく』の著者、株式会社モチベーションジャパン代表・松岡保昌さんと当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容からお届けする、第5回です。(2022年7月21日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:社員のやる気を、こうして取り戻せ!」)

多くの人が「多重役割葛藤」を抱えて働いている

 松岡さんが『こうして社員は、やる気を失っていく』を執筆した意図は2つあったそうです。

 1つ目は、「コロナによって、企業に求められる変化適応の必要性が強くなった」ということ。2つ目は、コロナをきっかけに「もともと変わりつつあった人と企業の関係が、一気に変わった」ということです。

 経営者、幹部、社員にも、改めてその認識を持って自社の仕組みや制度を見直してもらったほうがよいでしょう。

 「ライフ・キャリア・レインボー」というものがあります。

 キャリアとは仕事だけでなく私生活を含めた人生全体を通して形成されるというライフキャリアの考え方に基づいて、人生の各場面で担うさまざまな役割という観点でキャリアを捉える理論です。

これからはライフ・キャリア・レインボー

 このライフ・キャリア・レインボーから見える「多重役割葛藤」というものが、コロナによって生まれました。

 図の通り、レインボーの中には「家庭人」もあるし「職業人」もある。「職業人」のウエイトは総じて高いですが、人はその他にもいろんな役割を持っていて、その上で働いています。

 今までは会社のオフィスで仕事をしていたので、子供は目の前にはいませんでした。なので子どものことが日中に気になったとしてもリアリティはない。ところが、家で仕事をするということは、目の前の子どもが「ママ、遊んでくれないの?」「パパ、遊んでくれないの?」と来るわけですね。

 あるいは、まだ両親が健在であれば、みなさん自身も「子ども」です。その役割は50〜60歳になってもあり続けます。

 また、図には「学生」もありますが、これは要するに「学ぶ人」ということです。何歳になっても学ぶ力はすごく重要です。経営者に必要な能力(経営者の5つの力)にも挙げられています。

 こうしたさまざまな役割を複数、誰もが抱えて働いています。その「多重役割」がコロナによってより強く意識させられるようになったのです。

会社として、経営者や上司としては、「そういう状況の中で働いてくれているんだ」ということをちゃんと考えなければいけないのです。

自律する個人が増え始めた

 もう1つ、「キャリア自律」という意識が芽生えたことを松岡さんは指摘します。

 いまや70歳まで現役で働く時代です。しかし一方では会社が定年まで丸抱えをしてくれる時代ではなくなっています。

 これまでは会社の命令で(むやみに)何でもしていたかもしれませんが(それでよかったかもしれませんが)、そうではなくて、個人が自律することが求められています。

 個人も、世の中がどう変化するのかを自分で考えながら、自分の本当にやりたいことに近づく準備とアクションを自分でするべきだし、しなければなりません。

 こうしたことに気付き始めた人がすごく増えてきていると松岡さんは言います。

 「だから、なぜジョブ型にしないといけないのかというと、1つはそうしないとDX関連だとか特定の職種だけ給与が高くて、通常の給与テーブルに合わないという事情があると。もう1つは、やっぱり“自分がやりたいことをやりたい” “自分のためになることをやりたい”と、“人と企業の関係”の価値観が変化したからなんですね」(松岡さん)

 前回話した通り、「社内規範」「社外規範」と自分の思いが共鳴していたら、それは会社のためにもなるのです。そして本気で働いてくれます。

 そういう、個人が自律した存在であり、自律した人たちと向き合っている前提で、企業は施策を作るべきときに差し掛かっているのです。

 「変化する“人と企業の関係”がコロナでより加速される中、今後多くの人が活躍し、“ここで働きたい”と思われるような会社になるために、この視点をぜひ持ってほしい」(松岡さん)

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