北海道で宇宙ビジネス分野の人材マッチング加速 スタートアップの進出相次ぐ

北海道で宇宙分野の人材獲得に向けた取り組みが加速している。

» 2025年10月14日 10時36分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 北海道で宇宙分野の人材獲得に向けた取り組みが加速している。実験などに適した広大な土地、自治体のバックアップがある北海道にはスタートアップ(新興企業)が相次いで進出しており、札幌市内を中心に就職や転職セミナー、フェアなどが開催され、幅広い世代から関心を集めている。

オンラインセミナーでは各社の担当者から宇宙ビジネスの魅力が紹介された=9月26日

オンラインセミナー反響

 9月26日に開催されたオンラインセミナー「宇宙スタートアップが求める人物像」。金曜日の夜にもかかわらず全国の約100人が参加し、企業担当者の話に耳を傾けた。

 企画したのは札幌市の人材紹介会社「リージョンズ」。宇宙事業部の続似洋(つづきいらか)マネジャーによると、参加者の半分は30〜40代で、3割近くが50〜60代。「宇宙産業の人材に関するセミナーは初めてだったが、ミドル世代を中心に予想を超える参加があった」と反響ぶりを語った。

 登壇したのは、ロケット打ち上げ場を運営する北海道大樹(たいき)町の「スペースコタン」、ロケットエンジンの大量生産を目指す札幌市の「ミヨルニア・スペースワークス」など3社の担当者。いずれも新しいビジネスモデルを目指しているスタートアップで、事業概要などを紹介しながら「宇宙事業を通じて実現したい社会ビジョンを持つ気持ちの熱い人を求めている」と人材像をアピールした。

 北海道も昨年2月、人材発掘の一環として札幌市内で対面式の「宇宙業界探求フェア」を初めて実施。道内ではこのほか、人材紹介会社主催のフェアも開催されている。

新卒者より即戦力を

 人材を求める動きが強い背景には、宇宙ビジネス関連のスタートアップの進出がある。北海道は大樹町に民間のロケット発射場がある上、広大な土地を活用した実験が行える。北海道大や室蘭工業大など地元大学が人材育成に力を入れていることもあり、ビジネス環境が整っている。

 宇宙ビジネスは小型ロケットエンジンの研究や打ち上げ燃料の開発、これらの事業を支える関連分野など裾野が広い。宇宙スタートアップのほとんどは技術研究開発と経営の土台構築を並行して進めていることから、豊富な社会経験や事業運営ノウハウを持つ人材が人気となる。

 多くの企業が求めているのは、自ら課題を見つけて主体的に解決に向けて動ける即戦力。年代的には馬力がある30〜40代が圧倒的に多い。50〜60代でも特に秀でた能力がある人はニーズがあるが、新卒者を求める企業はまだ少ないのが現状だ。

行政も後押し

 行政も人材確保を後押しする。北海道は業界支援を狙って4月に宇宙分野の産業振興に特化した「宇宙産業係」を新設。各企業との対話を進めながら人材確保につながる情報発信などを展開している。毎年、全国の宇宙ビジネス関係者が集う「北海道宇宙サミット」で道は今年、人材マッチングの新たな取り組みとして、求職者向けの個別相談などを行った。

 道内の宇宙ビジネス関連のスタートアップは10社程度で、「増えてくるのはほぼ間違いない」(道の担当者)。専門の転職支援サービスも民間で始まっており、人材マッチングの動きは加速しそうだ。


宇宙ビジネスのスタートアップ 官主導だった宇宙開発がロケットや衛星の小型化などにより民間へと拡大していく中で、大学の研究機関などを経て宇宙ビジネスに参画する新興企業。革新的なビジネスモデルで短期間の成長を目指しており、北海道では約10社が立ち上がっている。国内外から高度な技術やノウハウを持つさまざまな人材が研究開発や営業、事業部門などで活躍している。

記者の独り言 現在の日本の宇宙ビジネス市場規模は約1.2兆円で、政府は2030年代初頭までに2.4兆円に倍増させる目標を掲げる。スマート農業などに欠かせない衛星は小型化が進んでおり、打ち上げ回数も今後は大幅に増える見通し。成長が約束されたといっても過言ではない分野だろう。新たな時代の礎を築き始めている宇宙産業で働く人々を取材していきたい。(坂本隆浩)

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