全国の市区町村では近年、住民票などの各種証明書の発行といった住民サービスのための窓口の受付時間を相次いで短縮している。
全国の市区町村では近年、住民票などの各種証明書の発行といった住民サービスのための窓口の受付時間を相次いで短縮している。人件費の抑制や優秀な人材の確保、職員のスキルアップを図ることなどが狙いで、ある自治体の調査などによると、これまでに少なくとも数十の自治体が時短を導入したとされる。行政手続きのオンライン申請が普及したことや、働き方改革への理解もあり、こうした動きはさらに広がりそうだ。
総務省によると、自治体側の判断を前提に効率的な窓口業務の運用を促しており、導入が進みつつある時短について担当者は「情報収集をしながら状況を見守っている」と説明する。
人口約5万3千人の大阪府四條畷市では、今年6月から窓口業務の開始時刻を15分遅らせるとともに終了時刻を45分早く切り上げ、午前9時から午後4時半までとすることを決定。窓口をトータル1時間短縮する。
市側が来庁者の動向を調べたところ、9割以上の人が午前9時〜午後4時半に窓口を訪れていることが判明。午前9時以前、午後4時半以降の来庁者は1日平均13人にとどまり、時短を実施しても影響は小さいと判断した。
市職員の一般的な労働時間は、休憩時間を除いて午前8時45分から午後5時15分までで、窓口の受付時間と重なる。
時間外であっても職員らは、住民票の発行に必要なシステムの立ち上げといった準備や片付けなどに追われており、働き方改革の実現や、残業代などの人件費負担が課題だった。年間約400万円の人件費の抑制が見込まれる。
市の担当者は「労働時間との兼ね合いで、大事な打ち合わせに窓口の職員が出席できないこともあった」とし、確保した時間を有効に使いたいとしている。
また少子化を背景に四條畷市では、建築や土木といった専門的な知識や技能を有する優秀な職員の採用が課題。時短を取り入れたことで、こうした職員採用に好影響を及ぼした自治体もある。
人口約6万人の福岡県古賀市では、昨年1月から窓口業務を、90分短縮となる午前9時〜午後4時に変更。すると職員採用試験の競争倍率がはね上がったという。
令和6年度に実施した試験の競争倍率は、社会人経験者で12.8倍、大学の新卒で13.6倍だったが、7年度は社会人経験者で20.8倍、大学の新卒で24.3倍に上昇した。育児に直面するなどワークライフバランスを重視する社会人経験者が時短に強い関心を示しているといい、古賀市の担当者は「採用活動にも一定の効果があった」と分析する。
窓口業務の時短に先立ち、古賀市が6年夏に全国の自治体にアンケートを実施したところ、約20自治体が導入済みで、約100の自治体が検討中との結果が得られた。近年では、転出入や出産などの申請がオンラインでできるようになり、コンビニエンスストアでも住民票などの交付を受けることが可能になった。こうした人を介さないサービスの拡充が、時短への理解につながっているのだという。
市の担当者は「時短への批判は皆無ではない」としつつも「職員の働き方改革やコンビニ利用などについて丁寧に伝えると、ほとんどの人が『それなら仕方がない』という反応を示す」と説明している。(藤崎真生)
各市区町村の役所窓口の受付時間短縮は、時代の流れに合わせた改革であり、非常に重要な取り組みだといえる。
近年では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透などを背景に、スマートフォンやパソコンなどを利用することで「行かない、書かない、待たないワンストップ窓口」を目指すという流れがある。ただ、デジタル端末に不慣れな高齢者らへの対応を考えれば、いわゆる窓口の時短は徐々に進めるのがベストだ。
また時短は、人件費の抑制や職員の働き方改革とも関連が深い。職員の採用に各自治体が競い合う中、メリハリのある窓口業務の運用を、公務員を目指す学生らが魅力的ととらえれば、優秀な人材の確保にもつながる。
各市区町村の役所は一般的に、住民にとって最も身近な行政機関であるといえ、時代やニーズの変化に対応しつつ、絶えずこうした改革を進めなければならない。(聞き手 藤崎真生)
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