P&Gジャパン木葉慎介社長 「消費者がボス」の企業文化強み 革新力で持続的な成長実現

日本市場でも多くの商品が各分野でトップスリーに入るシェアを獲得している競争力の源泉は何か。

» 2026年01月26日 09時28分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 衣料用洗剤「アリエール」や消臭・芳香剤「ファブリーズ」などで知られる日用品の世界最大手、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)。日本市場でも多くの商品が各分野でトップスリーに入るシェアを獲得している競争力の源泉は何か。23日までにインタビューに応じた日本法人、P&Gジャパンの木葉慎介社長は、少子高齢化が進む中でもイノベーション(革新)の力で成長できると強調した。

インタビューに応じるP&Gジャパンの木葉慎介社長 =11日午後、東京都中央区(三尾郁恵撮影)

消費者の困りごとを深掘り

――米P&Gにとっての日本市場の位置づけは

 「期待されているのは持続的な成長だ。少子高齢化で数量の消費は低成長の傾向だが、顧客の役に立つものをつくれば買っていただいて成長できる。金額的な意味ではこれからもイノベーションを通じてまだまだ成長を牽引(けんいん)できる」

 「イノベーションをつくるうえで非常に重要なマーケットだという認識もある。日本の顧客はかなり厳しい目を持っている。すごく細かいこと、小さな違いも認識できて、しかもそれを表現する力のある消費者だ。日本人に向けてデザインすることによって、世界の人が使える商品になるという面もある」

――イノベーションを生み出す力の源泉は

 「消費者を理解する文化・技術と多様性を持った社員、この2本柱で消費者の困りごとを深掘りできる。それがP&Gのユニークなところだ。例えば玄関用ファブリーズの開発は、外国人社員の気づきがきっかけだ。家に入る際に外国人は靴を脱がない。日本人が靴を脱ぐのを見て、玄関にはにおいの困りごとがあるはずだと最初に気づいた。多様な人たちが同じ事象をみることで、より消費者への理解が深まっていく」

――消費者を理解する文化・技術とは

 「P&Gの社員には上司の言うことを聞くのではなく、消費者の声を最優先に聞くことが末端にまで浸透している。『コンシューマー・イズ・ボス(消費者がボス)』という文化だ。私が事業部門のトップだった際に、あるプロジェクトの進捗(しんちょく)報告の会議にその責任者がいない。責任者の上司に理由を尋ねると『消費者調査に行っている』と。P&Gではそういうことがよくある。特に教育するわけではなく、会社の空気として根付いている。米本社のCEO(最高経営責任者)でも顧客の家を訪問する調査に行く」

グローバル人材、もっと日本から輩出を

 「それと、これまで培ってきたグローバルの経験やデータに基づいて開発された理解支援のツールだ。調査の見方や質問の仕方、消費者の行動からどういう理解をしていくか。色々な技術を使ってより深い消費者理解につなげている。P&Gの強みは消費者理解に基づくイノベーションだ」

インタビューに応じるP&Gジャパンの木葉慎介社長=1月11日、東京都中央区(三尾郁恵撮影)

――日本には花王やライオンなど競合企業が多い

 「競合企業のシェアや価格というのはあまり見ていないし、考えていない。競合の商品をみて、『これをしなくては』と思うと予定調和になり、市場に革新的なモノを出せない。競合よりもちょっと良い商品、それでは本質的に顧客の生活を改善できない。顧客の困りごとに真摯(しんし)につくることで、どんな商品になろうと最終的には顧客の生活に役に立つと考えている」

――人工知能(AI)も使いサプライチェーン(供給網)の効率化を進める

 「労働力不足は差し迫った問題で、日用品業界としてバリュークリエーションをしていかないとだめだ。AI需要予測や店頭在庫の画像認識技術などの導入で欠品率を改善し、発注の平準化までつなげて業務を効率化する。配送トラックの必要台数も減らせるなど環境問題や人手不足の課題解決に役立つ。そうした業界に貢献できる手法や技術をP&Gは世界から日本市場に持ってこれる」

――社長個人としての目標は

 「2つある。まず日本の将来を考えたときに一番大事なことは人口動態の変化で、今はその過渡期だ。過渡期にあったイノベーションをより出していける組織としての能力を会社に残したい。もう一つは人材だ。日本のビジネス、P&G全体のビジネスを次のステージに持っていける、グローバルにリーダーシップをとれる人材をもっと日本から輩出していきたい」


木葉慎介

 このは・しんすけ 2001年P&Gジャパン入社。ヘアケアやファブリックケア事業においてマーケティングのキャリアを積み、20年にファブリック&ホームケアのシニア バイスプレジデント(日本・韓国事業統括責任者)に就任。25年4月より現職。49歳。大阪府出身。

編集後記

 消費財メーカーで顧客第一を意識しない経営者はいない。ただ、末端の社員に至るまで本当に顧客最優先を貫き、継続できている企業はどれだけあるだろう。1837年設立のP&Gが、今も米国を代表する優良企業として投資家に評価されている理由は、愚直に消費者に向き合う不動の経営哲学にある、木葉氏への取材ではそう感じだ。

 「日本企業より日本の消費者を知っている」。国内メーカーには、P&Gにそう思わせてほしくない。消費者理解の切磋琢磨(せっさたくま)は、国内勢が海外で勝つための競争力にもつながるはずだ。(池田昇)

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