衆議院解散までの一連の騒動を見て問われるコーチング力(1/2 ページ)

自民党の内部分裂、衆議院解散の断行など、国を主導すべき政治家たちのドタバタ劇には目を覆うばかりである。企業の将来を担うリーダーは反面教師にすべきだ。

» 2009年07月29日 08時30分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]

 衆議院が7月21日に解散し、第45回総選挙が8月18日に公示、8月30日に投票という日程で行われることが決定した。東京都議会議員選挙での大敗以降の自由民主党のドタバタは、正直見ていられなかった。政治家は日本をリードしていく人たちであるはずなのに、なぜあのような醜態を国民に見せてしまったのだろうか。彼らを反面教師として、組織のリーダーが学ぶべきことは数多くあるように思う。

 現在の国会議員は2世、3世議員が多い。世襲議員だから能力がないと言うのではないが、彼らには鍛えられる場が与えられていないように思う。挫折や苦労を経験するチャンスがなく、持っている能力を開花できていない人もいるのではないだろうか。将来に対する夢やビジョンを持ち、果敢に立ち向かっていく。ときに挫折したり、悩み苦しんだりすることもあるが、その中で出口を求めてもがき挑戦し続けた結果、人としての能力が高まりさらなる可能性が花開いていくのである。能力を高めていくには鍛えられる場が不可欠だ。この場を得ることで知恵がついたり人脈ができたりする。そして、チャンスをつかむ能力が高まるのである。

 ビジョンを持ち、その実現に向かって努力してきた人は、たとえその過程で困難に直面しようとも、他人や環境のせいにはしない。起きていることを自分の責任ととらえ、どのように対処したら困難を乗り越えられるかを自問自答し続ける。そうでなければビジョンは達成できないし、それを乗り越えるからこそ、より高い能力を身に付けることができるのである。彼らはどのような状況にあっても、自分のとるべき行動を考え、最善を尽くす。今回の衆議院解散までの騒動は、そうした行動をとれなかった人たちが作り出したといえる。

ビジョンとは夢である

 このコラムを通して、リーダーの重要性について何度となく話してきたが、コーチングの観点からリーダーに必要なものを改めて話したい。リーダーに必要な視点は次の3つである。

(1)ビジョンを持つ

(2)自分が周囲からどう見られているかを常に意識する

(3)物事の本質を見抜く


 まずはビジョンを持つことである。リーダーとはビジョンを持ち、周囲の人とともに目的達成に向けて進む人だ。一人一人を観察し、強みを見つけて支援する。何のために仕事をするのか、何のために生きるのか、そのような価値観に気付かせてあげるのである。それがリーダーの仕事である。

 ビジョンとは夢である。政治家ならば「この国をどうするか」ということであり、組織のリーダーならば「この組織をどうするのか」ということになる。大切なのは、このビジョンの下に自分を置くことである。ビジョンの下に自分を置くとはどういうことか。その逆を考えると分かりやすい。ビジョンを自分の下に置いてしまう人とは、企業であれば「社長になりたい」と言っているだけの人である。一方で、ビジョンの下に自分を置く人とは「こういうお客様のニーズがあり、それに応える商品を提供する会社にしたい、それを実現するために社長になりたい」と考えるのだ。つまり、ビジョンありきなのである。

 これまでの日本の政治家の多くは「総理大臣になりたい」というビジョンが先にあり、それを実現ために画策してきた。これからは「この国を○○にしたいと思うから、自分が総理大臣になる」というふうに考えて欲しい。

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