缶入りコーヒーはこうして生まれた――「コカ・コーラに挑んだ男」経営のヒントになる1冊

缶入りコーヒー、冷温兼用自販機、ビタミンCキャンディーなど、次々と斬新な商品を世に送り出してきたポッカコーポレーションの創業者、谷田利章氏のアイデアの源泉に迫る。

» 2009年11月14日 08時30分 公開
[ITmedia]

 飲料大手のポッカコーポレーション創業者・谷田利章氏が語る、ひらめきと実行、積極進取で挑んできたその半生に迫る書。缶入りコーヒー、そして冷温兼用自動販売機の開発秘話は痛快そのもの。意外と知られていないが、世界で初めて缶入りコーヒーを開発したのも、冷温兼用自動販売機を開発したのも、実はポッカなのである。そのひらめきの発端となるエピソードは興味深い。

『コカ・コーラに挑んだ男―「人生なにが起こるかわからない」』 著者:谷田利景、定価:1470円(税込)、体裁:218ページ、発行:2008年12月、ワック 『コカ・コーラに挑んだ男―「人生なにが起こるかわからない」』 著者:谷田利景、定価:1470円(税込)、体裁:218ページ、発行:2008年12月、ワック

 真冬に高速道路を走行していた際、ドライバーが言った「眠気覚ましにコーヒーが飲みたい」という一言。当時はサービスエリアの食堂で飲むしかなかったコーヒーを、「車の中でコーヒーが飲めたら、ムダな時間がはぶけたのに」と谷田氏が思ったことが、缶入りコーヒー開発の発端になったという。缶入りコーヒーは「コーヒーは喫茶店で飲むもの」という固定概念、そしてびん容器が主流だった飲料業界にダブルパンチを与えることになる。

 この缶入りコーヒーはその後、冷温兼用自動販売機の誕生にもつながっていく。酒・食品卸問屋の「コーヒーなんか、缶に入れて売れるものか」という冷たい反応によって行く手をふさがれた谷田氏は、かねてより温めていた自動販売機の開発へ強い思いを抱くことになる。

 日本は当時、田中角栄首相による「日本列島改造論」の下、東名・名神高速道路や中央自動車道などが整備され、高度経済成長の真っただ中にあった。人もモノも大量に移動しはじめていた中で、「高速道路の交通は24時間休みがない。交通網の要所に缶入りコーヒーの自販機を設置すれば売れるはず」という予見がすでにあったのだ。今や日本人にとって欠かせない冷温兼用の自動販売機は、窮余の一策として生み出されたものと言える。

 それ以外にも、業界初となった「つぶコーン入り粉末スープ」の販売、日本発の「茶がらの出ない自動給茶機」、ビタミンC入りキャンディーなど、「これもポッカなのか!?」と驚くほど、谷田氏は数々の独創的商品を世に生み出していく。

 本書のサブタイトルにもなっている「人生なにが起こるかわからない」の言葉のごとく、怒涛の人生を歩んできた谷田氏。その発想力の舞台裏に触れることが出来る一冊だ。


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