IT系エグゼクティブのしごと事情ヘッドハンターの視点(1/2 ページ)

ITの業界の中でも今後はハイブリッドな人材が求められる傾向が強まると予想されます。彼らの活躍が、グローバルでの日本の競争力強化に少なからず貢献することを期待して、今後も業界動向をウォッチします。

» 2010年11月12日 08時00分 公開
[岩本香織(G&S Global Advisors),ITmedia]

 「ヘッドハンティング」と一言で言っても「コンサルタント」と同様にその種類はさまざまです。既にご存じの方も多いと思いますが、報酬を誰に請求するか、またどのタイミングで請求するかという観点から大きく分けて3種類のエージェントが存在します。

1. 成功報酬型エージェント

言葉の通り、マッチングが成功(紹介した人が転職)したら、新しい転職先の企業に報酬を請求します。一般的には転職希望者がエージェントのデータベースに登録し、人材募集中の企業とのマッチングをします。2010年1月〜3月にテレビ朝日系列で放送された長谷川京子主演の「エンゼルバンク〜転職代理人〜」は成功報酬型エージェントがモデルになっています。

2. アウトプレースメントエージェント

実際「ヘッドハンティング」とは異なりますが、「再就職支援企業」と位置付けされる事から勘違いされる場合が多々あるのであえてここで紹介します。条件交渉も含めた退職プロセスをマネージすることで退職対象者の現職企業から報酬を得ます。退職者に対しては再就職のためのサポートもしますが、再就職先企業から報酬を得ることは基本的にはありません。2010年1月〜2月にNHKで放送された坂口憲二主演の「君たちに明日はない」はアウトプレースメントエージェントを題材にしています。

3. 契約型エージェント

企業(クライアント)のためにヘッドハントを請け負った時点で報酬(コンサルテイング料とも言います)を請求します。転職に興味あるなしにかかわらず、クライアントのニーズにマッチした方々に積極的にアプローチします。

 これらはビジネスモデルが違うということであり、どこがいいとか悪いという話ではありません。違いを理解し、状況に応じてニーズにマッチしたエージェントを選択することが大切です。

 わたしは3番目の契約型エージェント世界最大手、コーン・フェリー・インターナショナルで日本およびアジアのIT関連企業担当だった約15年間、さまざまなプロジェクトで多くの経験をしました。その中で見たこと、聞いたことなどを自分の体験も交えながらお伝えします。

 さて、本日の本題です。「何から書きましょうか?」と編集者さんにお伺いしたところ「CIO(最高情報責任者、Chief Information Officer)に関する話をしてほしい」とのことでしたので、CIO関連のお話をしましょう。

 わたしはIT関連企業の担当だったと書きましたが、CIOに関しては業界問わず担当していました。例えば、大手外資系製薬業界のCIOを探すといった場合、コーン・フェリーには製薬業界担当者がいましたが、クライアントの話の中には「ERPパッケージの導入経験がある」「ITベンダーとの交渉ができる」「特にSCMに関して詳しい」「クラウドを戦略的に活用できる」などのニーズが出てきます。ターゲットとする候補者もITに詳しい方々なので、この場合製薬業界に強い担当者より、IT業界担当者の出番となります。

 数年前まではCIOという言葉を使うことがあっても、実質的には「Chief Information Officer」というよりは「IT Manager」という案件がほとんどでした。システム部はコストセンターとの位置付けで、上司は社長より、経理・財務部長や総務部長であることも少なくありませんでした。また、仕事の中身を詳しく聞いていくと「10〜20%が新規システム関連、80〜90%は現行システムの運用」というものでした。

 クライアントが想定するターゲット候補者も「うちよりシステム化が進んでいる企業のシステム部長」がほとんどでした。

 しかしながら「ビジネスにマッチしたIT化戦略を策定・実施できる人」「ITベンダーとの交渉力がある人」というような要件も含まれていました。

 「ITコンサルタントや、ITソリューションベンダーの方々もターゲットになりますよね」と言っても、「コンサルタントは高いばかりで、最後まで責任を持たないから」とか「ベンダーはビジネスが分かってないから」などという理由で、わたしの提案はことごとく却下されました。

 彼らは以前のシステム開発プロジェクトの苦い経験からこういったコメントをしている場合が多いので、その言葉を受け止める必要はあります。しかし、松下幸之助氏の名言「無理に売るな。客の好むものも売るな。客のためになるものを売れ。」の精神で、高いフィーを頂いているヘッドハンターとしては海外の事例や業界動向などを交えてクライアントに本当の意味で“ためになる”とはどういう人材かを話し合っていきます。

 残念ながら、わたしの力不足で「言っていることは分かるけど、やっぱりITコンサルタントは信用できないので、事業会社の人がいいです」と言われたことも何度もあります。

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