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» 2011年03月09日 07時00分 UPDATE

海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点:タイミング良く戦略を実行する方法 (1/3)

景気循環を管理し、競争力を上げるには。タイミングを見極める目を経営者が持つ必要がある。

[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]

 この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。

3分で分かる『タイミング良く戦略を実行する方法』の要点

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  • 景気循環を正確に管理できていないと、多くの経営者は投資するべきところで緊縮政策を打ち出し、節約すべき時にふんだんにお金を使ってしまう
  • 不景気では宣伝を行い、新しい人材を雇うこと
  • 好景気では流されないようにすること。悪い時期が待ち構えていることを考え、効率的な経営を行うこと
  • 利回り曲線と株式市場を観察し、未来に関するヒントを得ること
  • ブルーチップ・コンセンサス・サーベイは最も信頼できる予測データの発信源の1つである
  • 戦略的にヘッジを行い、不都合な外国為替や商品価格の変動に対する不安を取り除くこと
  • 価格の弾力性は一定ではなく、景気循環の様々な点で変動することを認識すること。
  • リスクのすべてが循環するわけではない。テロ攻撃から自然災害まで予測不可能な外的要因が循環を良くも悪くもする
  • 経営は投資と似ている。大勢に従わないことが重要である

この要約書から学べること

  • 上下する景気循環の中で組織を管理する方法とは?
  • 好景気の力を展開する方法とは?

本書の推薦コメント

 本書はカリフォルニア大学アーバイン校経営学部のMBA の生徒に景気循環マネジメントを教えるために立ち上げられた5年間の「マスター・サイクリスト・プロジェクト」の中で生まれたものです。刻一刻と変化する景気循環の中で、管理業務を行うための価値ある情報を提供しています。著者であるピーター・ナバロは、たとえ経営者が選んだ戦術がいかに正しくとも、悪いタイミングに実行した場合、失敗する確立が非常に高いというデータを本書で裏付けています。景気の悪い時期に投資し、良くなった時に売却する逆張り投資家のように、景気循環に逆らう経営者は悪い時期に投資し、良い時期には用心深くなります。集団思考の有益な対抗手段として本書をお勧めします。

 「時間」はよく水の流れに例えられます。水の流れには勢いよく流れる事もあれば、淀んでしまうこともあります。それは「時間」も同じであり、その時間と同様に動く「景気」もまた同じといえます。その「流れ」をうまく把握しながら、進んで行くことが経営であり、「流れ」を読めなければ経営は破たんしてしまいます。どのようなタイミングの時に舵をどのように操作していくと経営はうまく進んで行くのか、この書では非常に分かりやすく解説されています。

良い時期と悪い時期

 景気循環が動くと、その他の要素も一緒に動きます。その影響で消費者がより楽観的になったり、あるいは悲観的になったりします。また、金利が上がったり下がったりします。悪い時期は企業にプレッシャーがかかり、売上が下がったり、あるいは利益が減少したりします。また、投資家が質や安全性を求めるため、資金は減ってしまいます。しかし、ある意味においては、良い時期に企業を経営することも、悪い時期と同じくらい、あるいはそれ以上に困難なことになる可能性があります。

 投資家と同じように、経営者には不確かな未来のトレンドを予測しようとする癖があります。ウォール・ストリートには「木は空まで伸びない」ということわざがあります。つまり、永遠に続く好景気は無いということです。景気は、残酷にも必ず反転します。しかし、それでも毎回、ビジネスリーダー達は楽観主義のままで、そこに確かな判断力を加えることができません。よって、最も景気の良い時期に思いつきで事業拡大に着手し、結局、危機的状況が訪れた時には返済不可能な額の負債を抱え込むことになるのです。あるいは市場が暴落する直前に高額な買収を行ってしまいます。

 タイミングに敏感な投資家のように、経営者は動かなければなりません。誰もが今は悪い時期だと考えている時に、良い時期に備えるようにしましょう。そして、誰もが今は良い時期だと考えている時に、扉に鍵をかけましょう。世界的に競争の激しい経済の世界では、ミスを犯す余地はほとんどありません。景気循環に対応し、生き残るすべを学んで下さい。

 景気循環に対応するとはどういうことでしょうか?それはいつ、その時の状況が変化するのかを予測するということに尽きます。状況の良い時に大きな投資をすることは、それが反転した時に大きくツケが跳ね返ってくることになります。だからこそ次に来ることを考えて行動することが大切になります。

 「タイミング」というこの本のタイトルの一部がまさにそれを物語っています。

吉か凶か?重要な決断

 コンピューター・メーカーであるゲートウェイ社は、先駆的な直接販売形式(デル社がまねをして成功した)から手を引き、考えが不十分な、ほとんど致命的となる小売販売店への事業展開を試み、失敗しました。また、電力会社であるカルピン社も、不景気の後期に拡張を行い、その結果、株は暴落し、かつて高い評価を得ていた社債も紙くずになってしまいました。その一方で、ホームセンターを展開するロウズ社は、逆に不景気の中で拡大することで成功を収めました。なぜなら、ロイズ社は日曜大工が好きな人をターゲット顧客としており、この市場は不景気の時に景気が良くなる傾向にあるからです。相対的な結果となってしまった例をあげましたが、その成否を分けた理由はい ったい何だったのでしょうか。景気の悪い時期に企業の資本を管理するには、次の手段を講じて下さい。

  • 大きく拡張したいという誘惑に負けない

リーダーはよく、景気循環の絶頂期に拡大計画に着手し、景気が後退すると大きな負債を抱え込み、お金がほとんどないという状況に陥ってしまいます。

  • 現金は王様であるため、現金を守る

不景気に襲われる前にキャッシュアウトを断ち切り、備えましょう

  • 景気循環に逆らって動く

景気上昇に備え、不景気の時に投資を拡大しましょう

 不況に陥った時に取った対策の明暗が事例としてここで説明されています。逆転の発想とも思えるような戦略が、結果的に成功に導かれているように思えますが、決してそうではないことがここで具体的に語られている、3つの手段によって実証されています。これは是非とも参考にしたい事柄といえます。

買収と売却

 市場や技術の獲得、あるいは競合相手の除去など、企業が買収を行う理由は沢山あります。もちろん、経営者はなぜ買収を行うのか理解していなければなりませんが、それと同時に、いつ買収し、いつ買収しないのか、そのタイミングを知っていることが必要です。安い値段で売却するというケースがあまりにたくさんあります。高値で購入し、極めて高い利率でお金を借り、債務返済で身動きが取れなくなり、不景気の時に会社を続けることができなくなってしまいます。ノーテル・ネットワーク社やエクソダス・コミュニケーションズ社は、高額な値が付いている時に買収キャンペーンを立ち上げました――そして、信じられない程の株主の利益を暴落させました。

 反対に、インテグレイティッド・ディバイス・テクノロジー社は市場が転換するまで買収を行いませんでした。その結果、市場が転換するころには、ダメージを受けていた競合他社には競争する力は残っておらず、同社は極めて価値のある買収を行うことができました。また、半導体メーカーのマイクロン社と格付け会社であるフェア・アイザック社(FICOスコアを出している企業)も同じような戦略を立てました。

 景気循環を理解している企業は、自分達の戦略的野心に金銭上のリアリズムを加味します。そういった企業は景気循環を注意深く観察しているのです。値段が高い時に株を買うことはありません。このような経験則は、大手企業の買収と同じく、小口投資家にも当てはまりますし、有効です。

 「買収と売却」つまり企業の市場規模の拡大や縮小こそ、そのタイミングは非常に重要なものでしょう。企業の買収や売却には多大なコストが動きます。原則は市場価値が低い時に買い、高い時に売却する。これを忘れてはならないということです。

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