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» 2012年05月14日 11時00分 UPDATE

【新連載】「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記:変革期の帝人、ITに求められるものとは? (1/2)

今や10年前は想像もつかなかったことが、起こっている。柔軟な思考とスピード感そして情熱を持って常に新しいことにチャレンジする。

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:大井明子,ITmedia]

 今や「繊維メーカー」という言葉ではくくれないほどに、飛行機や自動車用素材、医薬品、電子材料などの幅広い事業をグローバルに展開する帝人。市場ニーズや経営環境が目まぐるしく変化する中、同社の経営改革を支えるIT部門をリードしているのが、IT企画室 室長の石川研一氏。IT部門を率いるうえでの課題やその解決法、リーダーに求められる資質などについて、ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム バイス プレジデント エグゼクティブ パートナーの重富俊二氏が聞いた。

経営のスピード感を支えるITが問われている

 ――帝人は今年2月に、中長期経営ビジョン「CHANGE FOR 2016」を発表し、2016年度の連結営業利益を、12年度予想の350億円から1000億円にする高い目標を掲げている。これを実現するうえで、IT部門にはどのような期待がかかっているのか。

ishikawa393.jpg 帝人 IT企画室 室長 石川研一氏

 帝人は大きく経営を変えようとしている。過去の歴史を紐解いてみると、主力の素材がライフサイクルを終えるとき、会社全体でも大きな変革を経験している。例えば戦後それまでの主力商品だったレーヨンからポリエステルへ切り替えるときには、ここに全経営資源を投入した。これを当時の社長は、「蛻変(ぜいへん)」と呼んだ。芋虫が蝶に変わるように、姿を大きく変化させることだ。

 今がまた新たな蛻変の時という意識だ。当社ではこれまで多角化を進めており、2003年以降は持株会社の傘下に、素材別のさまざまな事業会社を抱えている。しかし、取り扱う素材の種類や用途が複雑化する中で、素材は違うが売り先は同じであったり、また同じ素材でも売り先が衣料から工業用途まで多岐に渡っている。

 素材別で事業を切り分けていると、お客さまからは分かりにくくなっていた。このため、事業会社を一度「帝人」にまとめ、事業、地域、技術、人材のポートフォリオを見直し「ソリューション提供型企業」へ転換しようという動きになっている。それに合わせ情報システムの統合も必要になってくる。

 こうした大幅な組織改革にはITが欠かせず、われわれもこういった動きに主体的に関わっている。

 経営層からは、組織のように目に見えるものであれば変えるべきことは直感的に理解できるが、システム構築には人手と多くのお金、そして時間も掛かるが効果が見えにくいといわれている。

 しかし、経営側で望んでいることを情報システムで実現するのに時間が掛かると言えば、あっという間にIT部門が「抵抗勢力」になってしまう。これは避けなくてはならない。簡単ではないが、組織改革実現のためには情報システムの改革も必須で、担当役員と一緒になって成果を出すシステムを提案するよう知恵を絞っている。

これまでの多様な経験が今のネットワークに生きている

 ――今回のような全社的な組織改編に限らず、IT部門としては普段から事業部門の各ユーザーとのコミュニケーションが重要だが、手掛ける事業がアパレルから医薬品、自動車向けの工業用素材など非常に幅広いとなおさら難しい。社内の各部門とうまくコミュニケーションしていくうえでのコツはあるか?

 確かに非常に難しい。ただ、わたしはこれまで社内ユーザー向けの仕事を経験しており、そのときのネットワークが今に生きている。例えば、1994年には、パソコンを全社員4000人に1台ずつ配布し、全員が電子メールやファイルサーバで情報共有をし、ワープロや表計算だけでなく、簡単なデータベースも使えるようにするというプロジェクトを担当した。

 1年にわたり全拠点を回って教育を行うという全社規模のプロジェクトに関わることができたこと自体貴重な経験だったが、それだけではなく現場の人とのつながりができたことが大きな財産になっている。

 その後には「QR(クイックレスポンス)プロジェクト」という、販売、物流系のサプライチェーンマネジメントシステムを構築した。糸の生産から織物にして納品するまでのリードタイムを90日から30日に短縮して在庫を減らすことができ、タイムリーな生産が可能になった。ここではモノづくりからお客様に届けるところまでのプロセスに関わることができ、経験の幅が広がった。

 このような経験を重ねたおかげで、当時一緒に仕事をした人が、今社内のあちこちの事業部にいて、どこに行っても会話ができるので非常に助かっている。

 こうした自分の経験からも、IT部門と事業部門とのコミュニケーションの重要性は実感しており、IT企画室では、前任者の時代から事業部門とのつながりを強化しようと、ユーザー側とIT側の担当者の人事ローテーションを行っている。事業部で普段使われている言葉と、IT側の言葉を互いに理解することで、IT部門は相手が何を要求しているかが分かる身近な存在になっている。

 ――IT企画というと「計画を立てるまで」、という印象があるがどのような取り組みをしているのか。

 2001年に、帝人のシステム子会社、帝人システムテクノロジーと、日商岩井のシステム子会社であるインフォコムが合併し、わたしも翌年に新会社のTG(テイジン)システム部に異動し、2004年から2年間はTGシステム部長を務めた。そこでは帝人の会計、購買調達、人事給与などの更新を担当した。

 このときの経験から、大型プロジェクトでは特にユーザー側のプロジェクト管理をしっかりやる必要があると強く感じている。どんなに良いアイデアでも、実現しないと役には立たない。企画の役割の中には、システムの実装を円滑に行うことも含まれる。それは、ユーザーの啓蒙や教育活動があって初めて成立するもので、課された役割は非常に幅広いと感じている。

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