もしあなたが80歳以上ならキャリアプラン 90歳までの現役計画

自分で自分を雇う。高年齢者は雇われることをやめて、自営業になればよい。自営業になると失職もしないので、気持ちが楽になる。

» 2012年07月27日 08時00分 公開
[郡山史郎(CEAFOM),ITmedia]

 90歳まで現役を継続できたら、それまでの苦労がすべて報いられます。その上に余生の十余年が非常に幸せになります。これが先回の結論です。対象はビジネスパーソンですが、日本人の大半の方に適応しますので、最少不幸社会どころか最大幸福社会の実現です。ぜひ皆さんもご協力ください。

 ここで現役を定義しておきましょう。働いていて、対価を得ていることがビジネスパーソンの現役です。NPOやボランテイアは対象にはなりません。顧問やアドバイサーになって、傍迷惑をかけながら給与をもらっていたり、金利や配当をもらっている人も、現役ではありません。世のため、人のために働いて、多寡は別にしてその代金を得ていることが、現役でいる証拠です。

 働くといっても、若い人だって就職難なのに、働き口があるかという疑問に答えましょう。

 高年齢者は就職に有利です。まず安い。なぜなら生活費が安い。年金などの副収入や蓄えがあるから、安くても生活ができる。テレビ市場と同じく、価格ほど競争力のあるものはありません。けだし、90歳まで現役でいようと思ったら、健康と日頃の蓄えが必須であることは、先回話したとおりです。贅沢な暮らしが好きで、子供の教育や、ローンの返済のある若者や中年男に価格競争力ありません。年寄りが安値で若者の就職口を奪うといわれたら、それこそ本懐でしょう。悔しかったら、もっと良い仕事をしなさいと言い返せばよいわけです。

 ただ、現実はなかなかそうもいかない。いくら安くても、70代、80代の人を採用する企業はあまりありません。これは、年寄りは使いにくいという偏見によるものです。偏見も自由競争のうちですから、対抗手段を考えましょう。高年齢者は雇われることをやめて、自分で自分を雇う、つまり自営業になればよいわけです。自営業になると、上司にいじめられることが無くなり失職もしないので、気持ちが楽になります。

 自営業といっても、退職金をつぎこんで事業をやる話ではありません。借金をしたり、人を雇ったりして起業できるのは30代まで。高年齢者起業は自分だけ、自分のサービスを売るだけです。できることをしてあげるからお金をください、というビジネスの基本です。

 知識労働者のできる仕事はたくさんあります。わたしがやっている人材紹介業を始めとして教育、研修関連の人を対象とするビジネスはほとんどすべて、高年齢者のほうが有利です。世の中の、ある程度複雑な知識や経験を要するサービス業は、いずれも年長者が有利といえます。そのサービス業を、できるだけ安い単価で提供できれはいいわけです。

 年寄りは体力がありません。労働時間は短くせねばなりません。また、ある程度の省力化の設備は必要です。ただ、それに見合う経費が削減できれば、働き口は無限にあるような気がします。まず徹底して安くサービスを提供する。そして、相手に、このほうが得かなと思わせる。内容は、パートタイム、外注、業務委託、請負の類ですが、そのような定義は専門職には当然あてはまり、医者も弁護士も会計士も俳優も政治家もみな専門職です。

 すべての人が自分の能力(法律では労働といいますが、これほど非現実的な言葉はないでしょう。正確にはサービスと言うべきです)を自由に売り、対価を得るのが基本です。90歳まで現役で働く、それには自営業方式が最適です。自分の名前の下に、専門分野をつけて、株式会社山田営業研究所、株式会社田中技術研究所、株式会社中山教育研究所という具合に作る。作ったら、近所でもどこでも売り込みにいく。自分で売り込めないなら、売り込む会社、山田経営支援株式会社を誰かに作らせる、という仕掛けです。

 わたしの知人には、80歳台で現役の人がたくさんいます。いずれも、本質的には自営業で、複数の企業を相手に、楽しく仕事をしています。仕事からくる緊張感、責任感が心身の健康維持にもいいらしく、これは全員90歳まで現役計画を実現できそうです。共通点は明るい、人当たりが良い、前向きで幸せそう、ということで、90歳になる前に幸せになっています。逆に現役でない人は、多くの問題を抱えているようです。現役でない人は現役になればよいのですが、なりたがらない。それは70歳代に問題があるようです。

 70歳代をどう生きるか、を次回のテーマにしましょう。

著者プロフィール

郡山史郎

株式会社CEAFOM代表取締役社長

1935年鹿児島県生まれ。一橋大学経済学部卒。1959年ソニー入社

スイス、米国に市場開拓マネジャーとして通算12年滞在。米国大企業に転じて、日本代表、北アジア担当、複数の関連会社の社長を歴任。1981年にソニーに復帰し、取締役情報機器事業本部長、常務取締役経営戦略本部長、資材本部長、一般地域統括本部長など歴任。2004年株式会社CEAFOM創業。

国際大学、早稲田大学、一橋大学、九州大学など講義、講師多数。外国人記者クラブ、証券取引監視委員会など講演多数。著書、「ソニーが挑んだ復讐戦」。

ソニー創業者、井深大、盛田昭夫、大賀典雄の直属幹部として永年経営に参加し、社長賞4回の実績あり。現在、多くの企業に対し、経営全般、グローバリゼーション、事業企画などのテーマでアドバイスを行い、また、役員、幹部社員の研修講演なども行っている。


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