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» 2016年04月28日 08時00分 UPDATE

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:「無理の構造」――理不尽なのは世の中ではなくわれわれの思考である (1/2)

「なぜあの人だけが……?」「なぜ私だけが……?」世の中は理不尽なことだらけです。ではなぜ私たちはそう感じるのでしょうか? そもそも「理」というのは世の中がそうなっているという「摂理」のはずです。そうであるにもかかわらず、理不尽なことがあふれているとすれば、それは逆に私たちが「理」と思っていることが実はそうでないと考える方が自然です。ではなぜそのようなことが起きるのでしょうか? それは私たちが「本来非対称なものを対称だと錯覚している」ことからきているというのが本書の仮説です。

[細谷功,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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「対称性の錯覚」とは?

「無理」の構造――この世の理不尽さを可視化する

 はじめに、理不尽の元凶と考えられる「対称性の錯覚」について簡単に紹介します。対称性の錯覚というのは、本来対称でないものを対称だと錯覚しているということです。では対称とは何か?ここでの意味を簡単に定義すると「二者の関係性が同等である」ことです。つまり、A→BとB→Aが同じであるということです。

 例えば東京から大阪に行くのと大阪から東京に行くのとでは時間も交通費もほぼ同じと言ってよいでしょう。ところがクリスマスから元日までの日数と元日からクリスマスまでの日数は大きく違います。これがここで定義する「非対称」であるということです。

 ところが仮に、対称で当然だと思っていた東京〜大阪の往復が実は非対称で、帰りに行きの3倍の値段をふっかけられたら「そんな馬鹿な話はない」と憤慨することでしょう。これが「対称性の錯覚」ということです。実際の東京〜大阪間ではこのようなことは起こりませんが、実は「クリスマスと元日」が対称だと錯覚していて「いつまでたってもなかなかクリスマスが来ない」と嘆いている人が多いということです。

「自分と他人」における対称性の錯覚

 分かりやすく、しかもさまざまな理不尽さの根元になっているのが、自分と他人との非対称性です。つまり、私たちは「自分が他人に対して考えていること」は「他人が自分に対して考えていること」と同じであるという錯覚をしています。もちろんこのことに全く自覚がない人はいないと思いますが、普通に考えているよりも何(十)倍もその傾向があるという自覚がないのです。つまり自分→他人と他人→自分というのは全く違う「クリスマスと元日の関係」だということです。

 例えば、以下のことは改めて言われてみれば「分かっているよ」という話かもしれませんが、日常生活ではこれを忘れてしまっている(あるいはその意識が弱い)人が多いように見受けられます。

  • 借りた金(恩)はすぐに忘れるが、貸した金(恩)はいつまでも覚えている
  • 一番他人から聞きたくないのは「自慢と愚痴」だが、ついつい他人に言いたくなるのはまさにその2つである
  • 他人の成功は「運がよかったから」と思うが、自分の成功は「実力だ」と思う。失敗は全く逆で他人の失敗は「実力がないからだ」と思い、自分の失敗は「運が悪かった」と思う
  • ある分野に詳しくなってくるとついつい他人にアドバイスしたくなるが、一番されたくないのが「中途半端な人からのアドバイス」である
  • 他人のことは安易に一般化する(「アメリカ人は……」「芸能人は……」)くせに、「自分は特殊」だから一般化されると不愉快になって「○○とは違うよ」と違いを強調したくなる……

 この他この手の話はいくらでも出てきます。これは下図のような私たちの錯覚から来ています。

 図の左側が私たちが無意識に前提としている自分と他人の関係が対称であるという錯覚です。対して右側が実際の姿で、「自分」というのはあたかも世界の中心に存在する特別な存在で、他人はすべてその外側に存在する「遠くのもの」という自己中心的な視点です。

 問題は、それが悪いのではなく、それを「自覚していない」ことなのです。また先ほど挙げた事象すべてに当てはまるのが「他人からはよく見えるが、自分ではよく見えない」ことです。皮肉にもこの傾向そのものも自分と他人の非対称性を如実に表しています。

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