「かわいい部下」の条件が変わったビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

何とか引き上げてあげたい、組織を離れても付き合いたいと思える部下、そんな現代版の「かわいい部下」とはどのような条件を満たしているのだろうか。

» 2017年05月18日 07時18分 公開
[新井健一ITmedia]
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甘ちゃん部下の目を覚まさせたひと言

『いらない部下、かわいい部下』

 「彼をクビにしてください」

 あるプロジェクトで、現場監督にあたる役割を担っていたシニアコンサルタントは、マネジャーにこう言い放った。表だってこんな暴言が飛び出す職場に、居合わせたことのある読者は果たしてどれだけいるだろうか。

 今時、こんな暴言を吐いたら、吐いた側の立場が危うい。だが、筆者が新卒、第二新卒と言われていた当時は、まだパワハラという言葉は世の中に流通していなかった。

 それだけではない。クビを宣告されたのは、他ならぬ筆者だったのだ。いわば組織人として死の宣告を受けて頭の中は当然、真っ白になった。だが、今にして思えば、当時の現場で上司にあたる人物が、そのように言い放つのも当然だろう。筆者にとっては、コンサルタントとして初めての現場で、第二新卒と言いながら議事録ひとつまともに取れなかったのだから。


 拙著『いらない部下、かわいい部下』(日本経済新聞出版社:日経プレミアシリーズ)を読んでくれる読者に、暴言を吐け、パワハラせよと伝えたいわけでは全くありません。しかしながら、当時「お前、クビ」は相当インパクトのある言葉だったことも間違いありません。ところが面白いことに、そのときの上司とは、今でも仲良くしています。それぞれ独立した立場ですが、かつての上司は、当時のツカエナイ部下に仕事を振ってくれたり、仕事が広がるように自分の人脈から人を紹介してくれたりしているのです。

 もちろん、筆者が仕えたのはその上司だけではありません。「クビ事件」以降もさまざまな上司に仕えました。甘口の人もいれば、辛口の人もいました。辛口の上司に、やっぱり「お前、クビ」と同じようなことを言われた経験もありますが、コンサルタントとして初の現場でのあのひと言ほど自分を開眼させる言葉には出会えなかったし、いま親しい付き合いがあるかと言われれば、それもありません。これから重たい案件を一緒にやろうと言われても、多分なにがしかの理由をつけて断るでしょう。

 一体、「彼をクビにしてください」宣告をした上司と、他の上司は何が違ったのでしょうか。そして、筆者もさまざまな組織で上司という立場を経験してきましたが、組織で何とか引き上げてあげたいと思える部下、組織を離れても付き合いたいと思える部下、そんな現代版の「かわいい部下」とはどのような条件を満たしているのでしょうか。

 今回もこれまでの著作と同様、交遊範囲の中で、さまざまな年代のサラリーマン(独立して経営者になった、かつてのサラリーマンを含む)にインタビューを行い、上司と部下の今昔物語について豊富な経験談を披露してもらいました。

 なお、インタビューから抽出したすごい上司の条件、また筆者なりの上司論は、拙著『すごい上司』(ぱる出版)を参照いただくこととして、本書では現代版「いらない部下、かわいい部下」論に光を当ててみたいと思います。

なぜかわいい部下の条件が変わったのか

 本書は、上司から選ばれる部下の条件をさぐるものですが、ここでまずはっきりさせておきたいことがあります。これからの時代、選ばれる部下の条件は変わります。それはなぜでしょうか? それはひとつに、企業の成功モデルが変わったことがあげられます。

 これまで日本企業の成功は、個の力ではなく組織の力によりもたらされていました。これは、日本企業が物づくりを中心に成長してきたことにも起因します。

 戦後、おおむね20世紀の終わりに至るまで、日本企業は物づくりのネタを欧米先進企業から仕入れ、それを組織力でより競争力のある売り物にしていけばそれでよかったのです。

 ですが、今は違います。

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