Googleの生産性はなぜ高いのかビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

なぜ効率化するのか? 仕事を1時間早く終わらせることがゴールではない。

» 2017年07月20日 07時26分 公開
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。


『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』

 当初は検索サイトのイメージが強かったGoogleだが、今ではAI(人工知能)分野などにいち早く進出し、世界のトップ企業の1つとなっている。元Googleの人事担当であり、『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』(SBクリエイティブ)の著者で日本在住16年のピョートル・フェリークス・グジバチ氏に、日本企業の働き方について話を聞いた。


 Googleという企業に、みなさんはどのようなイメージを持っていますか?検索、最先端の企業、福利厚生がしっかりしている……などでしょうか。

 そのどれもが正解ではあるのですが、実際にGoogleの中で仕事をしていて印象的だったのは、Googleでは、世界より一歩でも速く進んで成果を出さなければいけないという強い使命感です。

 常に「今の10倍の成果を上げよう」「そのためには何をすればいいのか」「世界でより速く動くにはどうしたらよいか」と考えているのです。

 例えば、Googleは1997年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの2人が「Google.com」をドメインとして登録した時、そのブランド価値は0円だったかもしれません。しかし、2016年にはおよそ14兆5000億円を超える価値になっています。

 また、年間の生産性を金額に換算すると1259万円です。同じ計算で日本の大手企業と比べると、パナソニックは300万円、日立製作所は311万円ですので、4倍近い生産性があります。こうした差は、仕事のしかたや組織の在り方などから生まれるものだと思います。

 さて、この記事を読んだみなさんの中には、「なかなか仕事が終わらない」「新しい仕事をしたいのに、どうでもよい仕事に追われて何もできない」と問題を抱えている人もいるでしょう。

 誤解してほしくないのは、1分1秒を削っても、あまり意味はありません。やみくもに考えなしに動いても、アウトプットの質が落ちるだけです。

 より速く仕事を終わらせ、しかも結果も高める。結局、生産性が高まらなければ意味がありません。

日本企業は、生産性が低いのか

 僕は仕事がら、日本企業を訪問することが多いのですが、そこで気付くことがあります。これは、「なぜ、みなさんの仕事が終わらないのか」にも通じるので、先にいくつか挙げておきます。

 理由は大きく3つあります。

1、持ち帰って検討しすぎる

 日本に来てビックリしたことの1つは、多くの人がその場で済ませられることを、「では、持ち帰って検討します」「準備して出直します」と言って先延ばしにすることです。

 僕は大抵の作業は外出先でもできるようにしているので、できるだけその場で終わらせるようにしています。小さくても何か1つのことが終わると、もうその仕事のことは頭から消え、次の仕事に気持ちを切り替えることができます。

 仕事を「持ち帰る」と、いつまでたっても終わりません。どうしてもその場で解決できずに、持ち帰らなければいけないときも、「今、この場で解決できること」までは終わらせて、「今、返事ができること」はその場で返事をしておきます。そうすれば、持ち帰る仕事も少なくなり、会社に戻ってからもすぐに処理することができます。

 さまざまな部署や会社の人たちが集まって、チームを組んで仕事をすることも多くなりましたが、そこでみんなが「持ち帰って検討」してしまうと、仕事は遅々として進みません。

2、分析・検討しすぎる

 日本の企業で研修をしていて思うのは、「検討しすぎる」ということです。

 筋道を立てて考えることは確かに大事です。でも、その場の「直感」にも、実は大きな意味があります。「直感」はただの思い付きではありません。今まで積み重ねてきた経験からもたらされるものです。

 あらゆることを「検討」してから何かを始めるのではなく、まず「直感」に従ってみる。論理的に考えた結論が「直感」に反するときは、「直感」を信じてみる。その方がいい結果を得られることも多いはずです。

 日本では、マッキンゼー流のロジカル・シンキングがはやっていて、ロジックツリーやフレームワークを使って考えを深めていく人もいますが、そうやって分析することと、新しいアイデアを発想することは、実はまったく別物です。

 ロジカル・シンキングというのは、考えをまとめて誰かに伝える、つまり「アカウンタビリティ(説明責任)」を果たすときは強力な武器となりますが、クリエイティブに考えるためのツールではありません。

3、打ち合わせや会議といった多くのコミュニケーションが、コストやムダにしかならない

 みなさんが仕事の中で最もストレスを感じるのは、「コミュニケーションコスト」ではないでしょうか?

 「意味不明の会議が多すぎる」「何度も同じ説明をしなければならない」「相談したいのに上司がいつもいない」、あるいは、「部下の細かいミスが気になり、自分の仕事が終わらない」――。

 日本の企業で思うのは、コミュニケーションツールがうまく使えていないな、ということです。

 直接会った方が早いのに、メールで何度もやりとりをしていたり、「モノ」がないまま言葉だけで議論するためイメージが食い違ったり、頻繁にやり直しが発生していたり……。

 ワードの画面をプロジェクタに映して、みんなの前で文書を作ってしまえば合意もとりやすいですし、言葉よりも「プロトタイプ」(試作物)を見ながら意見交換した方が、イメージがわきやすく、より建設的に物事を進められます。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆