グローバル企業の会計処理は想像以上のスピードが要求される。ただし限られた数のスタッフでスケジュール通りに、正確に行うには、一定の「余裕」を生んでくれるツールが不可欠だ。
導入前の課題
子会社からデータをメールで送信してもらい、それをデータベースに取り込むという作業が必要だった。データは基本的に経理部しか見られないので、共有化が進まなかった。
導入後の効果
子会社がデータをWeb画面上で入力するので、データベースに取り込む手間が省けた。Web画面上で簡単に他部署もデータを共有することができるようになった。
大日本インキ化学工業は、言わずと知れた印刷インキや有機顔料分野における世界のリーディングカンパニーである。同社では早くからグローバル化を積極的に推進しており、現在では世界62カ国に213の関係会社(うち連結子会社が179社)を有するまでになっている。
従って、連結決算の開示が必要であり、同社では1998年からあるパッケージソフトを使った連結決算システムを導入し、連結決算を行っていた。だが、それから9年も経ち、そのパッケージソフトのモデルライフはそろそろ終焉期を迎えていた。また、08年度からは金融商品取引法の規程による四半期報告書の作成が義務化されることも決まっていた。そこで、同社が新たに導入したのが「BusinessObjects Finance(旧Cartesis Finance)」である。
同社には、サンケミカルという欧米で印刷材料事業を展開している子会社と関連会社計83社からなる企業グループがあり、そこがBusinessObjects Financeを使って2000年から連結決算を行っていた。「使い勝手がいいという評判を聞いていましたし、日本語にも対応していますし、経理の仕事には比較的万国共通な部分があるので、それを導入しようと思ったわけです」と経理部連結決算担当課長、金子潤氏は言う。
ちなみに、使い勝手の良さとして、経理部連結決算担当、大内一平氏は、システムの自由度の大きさを挙げる。「データの取り方にしても、帳票の打ち出し方についても自分たちのやりたいようにできるので、非常にデザインしやすいし、選択肢がかなり広がる感じがします」と言う。
一方、金子氏はデータベースの構造が会計の発想に非常に忠実である点を挙げる。特に、勘定科目とフローの2次元構造で格納される財務データが、分析の強力なツールとなる点を絶賛している。
「われわれにとっては、常に為替レートの変動が問題になりますが、2次元構造になっていれば、資産や負債の増減にレートの変動がどれくらい影響しているかを分析できます。その意味では、会計理論的に非常に良くできていると思います」と金子氏。
そこで、金子氏は情報システム部門のスタッフとともに06年5月から米国ニュージャージー州にあるサンケミカルの本社に出向き、システムを検証した。金子氏によると、「時間とコストを節約するために、できるだけサンケミカルのシステムを活用したい」と思ったそうだが、検討は次の3つの要素を加味しながら続けられたという。その3点とは、会計基準や仕事のプロセス面で違う点をアジャストすること、運用面でうまくいっていない部分を改善すること、当初は財務会計だけに限ること、というものであった。
「結局、3カ月ほどかけて丁寧に検討し、システムの骨格を決めた上でベンダーに具体的に相談したので、作りこみ自体はテストを含めて3カ月で終わりました」(金子氏)
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明治学院大学 経済学部准教授