NRIは、自社研究を目的に、国内の満15〜69歳の男女個人を対象とした「生活者1万アンケート」を、1997年から3年おきに計4回実施してきた。今回の調査は「大衆化するIT消費」という日本人の新たな消費スタイルが見えてきた。
2006年に行われたNRIの1万人アンケートによれば、消費者のIT化が急激に進展している。
平均年収は713万円(1997年)→596万円(2006年)と漸減するものの、IT関連の商品保有率は、PC:26.1%→70.2%、携帯電話・PHS:21.8%→82.9%、デジカメ:3.1%→56.4%と大きく変化した。インターネット利用率は、2.6%→49.8%、電子メール利用率も19.5%(1997年未調査のため2000年)→40.1%、と急増していることが浮き彫りになった。
同社のサービス事業コンサルティング部で上席コンサルタントを務める塩崎潤一氏は「電話やテレビの登場と同等、もしくはそれ以上に家庭にインパクトを与えたのが、第3のラインとなるブロードバンド」と述べ、インターネットの普及が進んでも、ナローバンドではなく、常時接続のブロードバンドが家庭に普及したからこそ、ITを駆使した消費が大衆化したと力説する。
その根拠の1つは、インターネットショッピングとオークションの一般化だ。ネットショップは20〜40代では3割、オークションも若年層では2割が経験している。これが示すのは、インターネットが信頼できるメディアになったと感じる利用者の心理的変化だ。特に、10代と50〜60代で信頼する人々が増えるようになっている。
ネット上の情報をよく検討、商品の選択、購入に際し他人の評価を判断材料にする消費者が増えた点もある。
インターネットの普及後、消費者は能動的に企業のWebサイトなどから情報を収集できるようになったが、情報の主導権は依然企業側が握る「情報の非対称性」の状態にあった。
ところが、ブロードバンドが普及することで、CGM(消費者主導で生成するメディア)が影響力を強め、価格比較サイトやクチコミサイト、ブログ・SNSなどから情報をとることができるようになった。
それにより「安くて経済的なものを買う」(2002年:50.2%→06年45.3%)といった価値観が、「価格が品質に見合っているかよく検討する」(2002年:52.4%→06年:62.0%)、「使っている人の評価が気になる」(2002年:13.6%→06年20.9%)に変化し、「情報の主権交代」が起こった。
これを塩崎氏は、米国のジャーナリストが考案した架空の企業の名を引用し「1億総グーグルゾン消費化」と表現する。消費者は、グーグルの的確な検索手段とアマゾンのレコメンデーションなどの機能をフルに活用し、商品に対する情報(良い点・悪い点、価格、販売ルートなど)を獲得していくようになった。
PC、テレビ、ケータイなどから認知→探索→購入を同時に行う「マルチウィンドウ消費」によって、企業はそのステップをコントロールできなくなりつつあるのだ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授