広告をベースにしたビジネスモデルの変化が、コンテンツビジネスそのものに大きな影響を及ぼしつつある。
2007年もいよいよ最後の月に入ろうとしている。今年もIT業 界ではいろいろな話題が目まぐるしく駆け巡った。それらすべてに共通する本質を見いだすのは容易なことではないが、多くの話題において、従来「コンテンツ」と呼ばれてきた領域がいろいろな意味で深く関連するようになってきているのは間違いない。
話題の最先端を走るグーグルは言うに及ばず、前回取り上げたアップルの一連の話題についても、音楽や映像といったコンテンツ抜きには語れない。国内においても、ワンセグやゲーム、コミュニティーなどを中心に前半特に勢いがよかったモバイル関連、そして後半になって注目を集めはじめているニコニコ動画などを見ても、話題の本質はコンテンツとそれに関連するビジネスモデルなどに移りつつあるようだ。
こうした傾向は、何も生活者向けのサービスに限ったことではない。いわゆるビジネス領域においても、メディアや広告といったコンテンツそのものを扱う業界はもちろん、それ以外の領域においても、ITの役割や対価の問題を、マーケティングや広告といった価値を軸に再定義しようとする動きが加速している。
最近何かと話題の“SaaS” (=Software as aService)や、Platform as a Service(サーバやネットワークなどハードウェアのサービス化)は、もはやIT導入の選択肢の1つとして確立に向っている。
利用者に広告を表示することで、代価を徴収せずに無償でサービス等を提供するというモデルは、民間放送で定着し浸透したものである。このモデルはグーグル等によって瞬く間に、インターネットサービスの世界における標準のモデルとなった。
従来メディアの枠を超えた幅広いサービスが無料化される様を、「広告経済」と表現する人もいる。これが可能となる理由は、広告そのものがメディア上で流通するコンテンツであるからに他ならない。巷で見受けられる、広告収入で成り立つ雑誌や、無料で飲料を提供する仕組みなどは、そうした広告経済の新たなトライアルといえるだろう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授