iPhone 3GはNewtonの夢を再び実現する新世紀情報社会の春秋(1/2 ページ)

現在、いたるところで話題に上がっているiPhone 3G。大幅な価格の引き下げの背景を考えると、アップルがしかける大勝負の内容が見えてくる。

» 2008年06月18日 06時11分 公開
[成川泰教(NEC総研),ITmedia]

プロダクトとしての成功に楽観していないアップル

 アップル社のiPhone 3Gが発表された。昨年の発表時には発売までに約半年間のブランクがあったが、今回は7月11日に世界同時発売となる。そして何よりも、ついに日本でも発売されることが正式に発表された。国内で最も大きな関心事となっていたモバイルキャリアについては、予想通りソフトバンクモバイルが最初の発売キャリアということになった。ただし他社についても今後の可能性は否定されていない。

 WWDC2008で発表された内容については、既にいろいろな記事や分析がなされているので省略するが、単なるiPhoneの3G対応というだけにとどまらず、非常に多岐にわたってよく練られた戦略に基づいて発表されたことについては、相変わらず実にアップルらしいと感じる。

 まず素直に驚いたのはやはり価格である。メモリ容量が大きい16GBモデルで299ドルというのは、現行のiPod touchの8GBモデルと同じ値段というかなり挑戦的な価格である。iPhoneの発売に前後してiPod touchの値下げが行われるもほぼ確実だろう。価格のなかで大きなウェイトを占めるフラッシュメモリの市況動向から考えれば、この値段はもちろんあり得ないものではない。

まず価格で驚かされたiPhone 3G

 しかし、大幅な価格の引き下げの背景を考えるに、アップルがこのマシン(おそらくはiPhoneとiPod touchの両方だろうと思うが)について、従来にない大きな勝負に打って出ていることは明らかである。SDKの公開やビジネス用途を意識した技術開発や戦略は、同社がパーソナルやビジネスといった区分を超えた、包括的な意味での携帯端末戦略に本格的に打って出ることを意味している。そして、彼等は決して従来の様に、プロダクトオリエンテッドでの成功を楽観視しているわけではないと筆者は見る。

 商品名に新たに冠されることになった"3G"が象徴的なものである一方、ネットワークの選択肢として依然、WiFi(無線LAN)も大きな位置づけになっているところに、これが単なる携帯電話ではないモバイルコンピュータであるという同社の考えが現れている。その意味で、PCやMacとの接続性においてさまざまな連携を可能にしていることは、コンテンツレベルでのシステム連携にとどまる従来の携帯電話ベースでのビジネス用途開発に比較して、決定的なアドバンテージとなるだろう。加えて、Bluetooth2.0を標準で装備していることもインタフェースの拡張性という意味で、意外に大きなポテンシャルと考えられる。

 今回iPhone 2.0として提供されるソフトウェア機能の多くが、従来のiPhoneやiPod touchでもアップグレードでも利用できるようになることからも、これまでに出荷された一連の商品が同じファミリーであるという考え方がうかがえる。この新しいファミリーは、かつてApple Newtonが指向した小型コンピュータの夢を、再び現実のものとして世界に現すための挑戦である。

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